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作品名:靴飛ばし 作者:コツリス

第1回 手紙
 お盆前の蒸し暑い日の事だった。一通の手紙が届いた。差出人は古川真奈美だった。古川……真奈美? 誰だっけ? 私は麦茶を飲みながらしばらく考えた。記憶を辿っていく。ああ、思い出した。小学校の同級生だ。でも卒業以来三十年も会っていないのに、何で今さら? 不思議に思いながら封筒を開けると、中には二枚の紙が入っていた。
『今日は。小学校の同級生だった古川真奈美です。覚えていますか? どうしてもお会いしたいので、お手数ですが私の家まで来て頂けませんか? 事情があって、私は動けないのです』
便箋には丁寧な字でそう書かれており、最寄り駅からの地図が添えてあった。私は真奈美の顔を思い出そうとしたが、出来なかった。おぼろげに、いつも長い髪をお下げにしていた事は覚えている。活発で男勝りだった私とは対照的に、女の子らしくて大人しい子だった。だが、顔が思い出せない。どういう事情か知らないが、ここは一つ訪ねてみようか。会えば分かるだろう。
 
 私は東京から新幹線に乗り、広島へと向かった。走行距離を思えば、旅行と言って良かった。私はウキウキしながら弁当を頬張り、窓の外の景色に見とれた。富士山はもちろんの事、良く晴れた陽射しに輝く田園風景が美しい。これは何か良いことが待っているような気がして、私は胸を踊らせた。
 
 広島に着くと、在来線に乗り換えて、小さな駅で降りた。地図を頼りに真奈美の住んでいる家を探す。裏寂れた住宅地に、そのアパートは有った。築数十年は経っているだろうボロアパートである。鉄製の階段を二階へと上る途中、階段の板が錆びていて、踏むと軋んだ。私は注意深く階段を上ると、二0一号室と書かれたドアのインターホンを鳴らした。


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