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作品名:マエノスベテ 作者:たくひあい

第66回 97 98
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「数値というと、敵に対しても言えるかな」

と彼は言う。
ちなみにぼくらは傘をさして歩いている。
さほど雨は降っていないのだが、モンスターGOのフリをする集団が、先ほどからあちこちに待ち伏せて撮影をしようとしているのだった。
芸能人か。パパラッチですか、と突っ込んでもどうにもならない。

「あぁ、敵は少し強いくらいが良いけど強すぎても倒せないからね……」

本当こんな話をする場合ではないかもしれないけど、仕方がない場合もあるかもしれない。

「むしろ、倒す必要はあるんだろうか?」

「交渉と、エサ、どちら派?」

「眠らせる派かな」

「仲間にするの大体リードとかつけないけど逆にすごいですよね、犬はつけてますし」

「そう、多頭飼いしてても、あまり怖がられないよね」

「リードとか首輪は、やはり、犬が犬たるゆえんじゃないだろうか」
 なんて話をしながら、角を曲がる。たしか、ええと、ぼくらの家より少し奥だから……
と脳内に地図を広げる。

「実際こいつらなんなんだ? 一日にベンツを3台続けて見たぞ、こんな田舎で!」

彼があきれたようにちらっと横からついてくる車について言う。

「あいつらじゃね?」
「え、まじ、いんの?」

誰かがまるでぼくらについて言いふらしているかのような言葉が、背後からボソボソ聞こえる。さりげなく、そちらをうかがうと、傘の下からでも、コミケで有名、らしい人気フリーゲームの派手なバッグを持つ姿を確認した。一人はヲタクらしい。
「……」

改めて言うが、人がまばらな田舎においてあまりアニメやゲームグッズを身に纏う人間はそう居ない。高齢者が多いからでもあるし、単に店が少ないからでもある。つい最近になってアニメショップがぽつぽつ増えてきはしたが、派手な装いで来るやつは大半都会帰りと未だ相場がおよそ決まっている。

2019/06/23 22:43



98
 つきまとうならカメラを起動してみようかと彼が携帯を出して見る。電源が入るとたん、付きまとう歩行者は一斉に自分のスマホを見た。
このタイミングの良さ!
間違いなく、これは、なにかしらの情報を共有している。

「社長がさー」

「俺も、具体的には聞いてないんだよな、こうしろってだけで」

時折、若者の口からは、たびたび社長という言葉がこぼれていた。ぼくたちは人を巻きやすい場所を求めて一旦あちこち走り回った。

携帯は電源を一旦切るしかない。
こんなのが毎日続くと、ぱったりと音信不通になってしまうのでかなり不思議な人物になってしまいそうだが――

「社長?」

ぼくが隣にいる彼女に確認をとると、彼女は苦笑いのような半泣きのような表情で言う。

「はぁ、私も、よくは知らないんですが、マエノスベテは、社長だそうで」

「どんな会社だ、うわっ」

三人、走り回っていた途中、緑川☆印刷のトラックがぼくらの前方、狭い路地でわざわざ横にとまる。

「塞がれた!」

彼が叫ぶ。ぼくらはどうにか引き返すとまた走り出す。
なんだ、これ、どうなっているんだ?困惑するなかで脳裏に浮かぶものがあった。

「あの男。

SNSの――アイコンがあった。待ち受けに。Twitterのものだった」

最近SNSでいろんな事件があったとニュースになっていたばかりだ。半グレ集団が、SNSで集会を呼び掛ける話や、麻薬を売る人が、販売を持ちかける話、自殺志願者を募る話。

「確かにSNSで、僕らについて共有していた可能性はあるな」

「近くに交番がある。そばを通ろう」

ぼくと彼はそう言い合った。
彼女が「あの男?」という顔をしていたが今は説明する場合じゃない。此処は戦場だ。
2019/06/24 10:56


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