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作品名:マエノスベテ 作者:たくひあい

第45回 64 65
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 さてウシさんの元に行こうかと足を進めようとしたら、肩をつかまれた。

「話、聞いてなかったかな? 今から行くのは映画館。デートだからね」

せっかく金曜日がわかったのにという気持ちもあるが、そういえばそんな約束をしていた。
「そうだったね」

 そんな話をするなかでも、ひよひよと頭上で可愛らしい鳥が鳴いていて、心地よいBGMだった。アスファルトの上を踏みしめている間、彼はコンクリートとアスファルトについて熱く語っていた。
しばらく語った後に間があいたのでぼくは思いきって口を開く。
「そういえば何を示し合わせたんだ?」

「これからわかることだよ、そうだな、まず僕が彼女と二人になる。君は隠れていて何かあったときのために通報の用意をしてくれ」

 そのためにぼくを呼んだのか。少し疎外感はあるが致し方ない。

「いや、その前に……」


ちらりと、彼は腕につけていた時計を見た。

「うん。約束まであと30分はあるか」

「え?」

 彼は、映画館がやや遠回りになる細い路地へ向けてぼくの腕を引いた。

「行こう」

2019/06/03 11:12


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 二人して人が一人やっと通れるような細い路地を縦になって走った。
わざわざなぜ走るんだとも思えたが寄り道のぶん距離が増えたと考えると短縮のためなのかもしれない。
少し行った先で、何かの店先の窓ガラスが行き止まりの役目をし、左右にT字路に曲がるようになっていた。

「はぁ、やはり久々に走ると、疲れるな」
店を背に壁にもたれた彼が荒い息とともに呟く。ぼくはまだ軽く動いたくらいにしか感じず平気だった。
なぜ曲がったのかを聞く間もなく、彼はまっすぐ左へと曲がって進んで行く。

「映画館なら遠回りだけど」

ぼくが言うと彼は笑った。

「あぁ遠回りしているんだ」


 後ろの方で、サイレンのようなものが聞こえた。
振り向いて遠巻きに見る限りどうやらもと来た道のほうで、赤いスポーツカーと青いオープンカーが何かあったようだ。

「運がよかったな。もう少し遅れていたら、あの渋滞に巻き込まれていた」

「運、というよりも、これは、デジャヴな気がするんだが」

彼はアハハハ、とよりいっそう高らかに笑った。

「鋭いな。そう、マエノスベテのご友人とやらが、こうしてぞろぞろと来てしまうみたいだね」

ノリノリな感じで腕を絡めて来る。少し不気味だったので、退けようとすると「彼女のフリ」と言った。
なんて雑な変装だ。


「……しかし、ぼくらが隠れなくてもいいんじゃないか?」

「いや、あれは、目を付けられてる。たぶん僕らが出てくるのを待ち伏せしてたんだ。
これからの用事を思うと、なるべく会わないようにしたほうが無難だろう」




2019/06/06 00:59


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