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作品名:マエノスベテ 作者:たくひあい

第41回 57 58
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 その部屋は荒れていた。
どうにか元の家具の配置は想定出来るが、服や小物が散乱していた。勝手ながら二階の一室のドアを開けたとき、ウシさんと彼女が何やら向かい合って話をしていたようだったが、彼女の方は、魂が抜けたようにぼんやりとしている。

「人を好きになるなんて誰にでも出来る、簡単なことなのに……コストパフォーマンスで選んで恋愛から逃げてるだけよね?
でも実際こういうものはね、不利益も付き物なの、綺麗事じゃないのよ。
どうしてあなたはいつも逃げるの? そうやって逃げて失礼だと思わない? こんな簡単なことから」

彼女は聞いているのか居ないのか、ただ、ぼーっと頷くのみだった。

「もう、やめてください」

部外者の癖にだが、思わず部屋に飛び出していた。

「それは間違っています。
誰でも出来ることじゃありませんよ、人なんか好きになる方が難しいんです。ぼくだって、そうですから」

「いきなり入ってきて、なんですか」

ウシさんは驚いてはいたが、騒いだからと少し予想できていたのか、案外に冷静だった。

「たまたまあなたに簡単だっただけのことで、追い詰めても何も特はしません。
それに誰でも出来るなんて言葉を使うのは、恵まれた富裕層だけです」

「ハハハ。あなただって、居るじゃありませんか」

ウシさんは、急に高い声で笑った。ぼくの後ろ、を見て。

「…………」

ぼくが、なんとも言えない表情のまま、彼を見ると、彼は項垂れたまま「またかぁ……!二回目かぁ」と嘆いていた。
2019/05/29 20:23


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「あなたたち、いい加減にしないと。いつでもLEDライトにつけたカメラが見ていますからね!」

ウシさんが声を張り上げる。
頭上には丸く光を放つ電灯があった。

「僕らは何もしていない」

彼が肩を竦める。

「まあ、騒ぎは勘弁かな。
ウシさんが知っての通り、僕はあまり僕のことが公になりたくない理由があるんで」

最近の監視カメラは良くできていて一見それとはわからないものが多く出ていた。
世間では防犯グッズとしてつい最近も、電気型カメラが発売されていたばかりだったが、その写真ではカメラ部分が大きくてそれとわかりそうな作りだった。しかしこの家のカメラはよくできていたのか、じっとみてもなかなかそれとは思わなかった。
「しかしよくできていますね」

 彼は関心しながら言う。
心から感心しているみたいだった。

「確かにこの部屋、一見それとわからないですがあちこち見通しが良さそうです」

 なにかを思い出したのか、クスクスと笑っている。

「な、どこの部分?」

ぼくがさりげなく訪ねると、彼はそれを言うと面白くないなどと答えただけだった。
彼の携帯が着信を知らせる。
失礼、と携帯を開いた彼は、すぐに苦笑いした。

「ハハハ、よろしく、ってさ。ま、そんな約束だから仕方ないか」

2019/05/30 23:11



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