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作品名:マエノスベテ 作者:たくひあい

第32回 32
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 しばらくして戻ってきたナエさんは言う。

「今ウシさん、ベッドで寝てて、なんかすごく機嫌は悪かったんだけど、
私が何かしたかって聞いたら『気にしなくていい』って……

怒っていたって私たちに関係ないといえば関係ないけれど、確かに気になるよ。
理由がわからないもの」

「見合いをすすめたがるおせっかいおばさんには、突っかかっていたが……」

「私も、勧められました」

彼女が、小さく挙手する。

「えぇ、私も。まあ挨拶がわりの軽い話題として流されたけれどね」

 そういえば、と腕を見ると、ナエさんのくまちゃんは黙ったまま彼女の腕に収まっていた。何か、思っているのかはわからない。


「途中、キノコマイスター・舞の話になりましたね」

「あぁ、あったあった!」

彼女ら二人は何やら意気投合する。

「キノコマイスターの服、candyにコラボ追加されたじゃない?」
「え、そうなんですか、あの駅前のお店……」

『キノコマイスター・舞』は、危ないキノコと日夜戦う少女戦士のアニメだった。
牛書店という本屋を営む家に暮らす牡牛座。好きな食べ物はキノコではないらしい。どうやら作品をウシさんも知ってるらしくて盛り上がったとか。
『キノコマイスター舞』がどこからか俊足牛に乗って現れて、危ないキノコをぶったぎるというシンプルな構成が年齢を選ばなかったのかもしれない。

「結構打ち解けた雰囲気なんですね」
ぼくが言うと、彼女らは頷いた。
「えぇ、案外アニメとかにも興味を示されるみたい。わりと気さくなの、普段は」

人は見かけによらないらしい。




44
「まだ騒いでるの!」

上階から声がした。
どうやらウシさんが降りてきたらしい。

「私ならなんでもないから早く帰りなさい」

 案外に落ち着いた声でウシさんは諭した。
ナエさんと盛り上がっていた彼女はここぞとでもいう勢いで質問する。
「フラワーアレンジ教室はどうするんですか? 地域のデザインフェスティバルに出すのとか、みんな楽しみにしてます」

「あれはやらないよ。もう断念するしかないんだよ、わかっておくれ! さああんたらも帰って」
地域であるデザインフェスティバルは、皆がそれぞれ作ったりデザインした品を販売、購入できるイベントだ。
都会より規模は小さいが、それなりに続いており、『彼』も人形、作品に使える素材などを見て回ったりするらしい。

「急に中止になったり、急に、ウシさんがお茶会を閉めたり、みんな心配してます!
『お節介おばさん』だって、
見た目は少し派手かもしれない。でも誘いを断る数は多いと言っていましたよ、見た目だけで判断されたくないからだと」

「フン、だったら、あんたこそどうだ、清純派ぶる輩なんかむしろ身持ちが固いわけがない」

「なぜ、そんなことを」

彼女は、いきなり振られた話題に困惑していた。

「実はいろいろ経験していたりしてね」

ウシさんはまるで場の空気に気がついていないようで楽しそうに語っていた。

「若いし? 美人同士は余計なこと言われないからつるんでいて楽だとか、思っているんでしょうね!」

彼女は不本意なようで、硬直してしまいそうな雰囲気を纏いながらも、どうにか言葉を紡いでいた。

「そっ、そんな風に私たちを、見てたんですか? ウシさんは確かに年配ですが、だからって浮いたりしないようにみんな気を遣ってくださって……」

「ああやだやだ、意図の裏側が見えるというのかね? ここでこんな風に話したら、こんな風に振る舞えば、印象がよくなるとかそういう計算する女しかいない」


2019/05/12 17:57


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