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作品名:マエノスベテ 作者:たくひあい

第24回 28
28
「以前、此処に《彼》がすみついていたのです。


行くところがないからと頼まれ、最初は不憫に思ったのですが慣れるにつれてその正体を知りました。

とても切れやすい、包丁のような人でした。


家では、俺はマエノス・ベテと名乗り、
俺はマエノスベテだからな、と常に強気で言い聞かせていました。


私を様々な女性の名で呼びました。
やめてほしいと、頼んだのです……
それらは誰なのかと、聞いたのです。
知らないフリをするのか、なんて卑劣なやつだ、彼は私がその名前に疑問を持つとまず呆れ、次に罵ります。

『お前が、知っているんじゃないのか? まさかボケたんじゃないだろうな!!』

マエノス・ベテは私の髪を強く掴むと耳もとで大声を出してそう罵倒していました。

『わかるか、わかるよな?

俺はマエノス・ベテだ』

そして、何度も私を叩きました。
『誰ですか? なんて、卑しい女だな。計算高いというべきか』

私が何かわからないことにたいしてひどく腹を立て、また自分が、マエノスベテだと他人が思ってないだろうと、信じませんでしたので周りに対してやけに疑心暗鬼で顔を赤くしていました。

計算高いのであれば、私はきっとフリンカやフリンダの正体を知るフリをし、愛想よく、マエノスベテと自分を呼ぶ彼に、そう何度も言い聞かせたはずです。

彼に気に入られることすらありませんでした。

その代わりに彼は、私がいかに計算高く卑しいかという話を
近所に吹聴するほどに怒り狂いその卑しさを雑誌のコラムに投稿までもを目論む始末だったのです……

しかしこの《彼》マエノス・ベテは、笑わない鬼ではありません。
横瀬という名の人と時々電話をしています。
恋愛経験の豊富さが彼の自慢のひとつで、出会い頭に私に毎日のように自分を呼ぶ強要をするだけではなく、横瀬とは常に笑い声をさせていました。

「ヨコセ、マエノスベテだよ!」
彼は横瀬にだけは自分を認めてもらえるのか、それとも一緒にガールズハントを目論むのか、何かと相談し、そのときだけの笑顔は私の見ないものでした」


2019/04/23 19:30


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