小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:マエノスベテ 作者:たくひあい

第22回 24 25
24
 最初は、ブリンクリーとか、プリンキピアと仰ったのだと思って聞き流したけれど、いつまでも「フリンカ!フリンカ!」の謎はしばらく解けないままだった。浮気も、もしかしたらウワキはなく、彼特有の呪文のひとつだったのかもしれない。

 それから少ししてどうしてもフリンカとしか聞こえない確信とともに、フリンカについて、どこかにないかと辞書を引いた。
スロバキアの民族主義政治家のことだった。
しかし私は、あまり図書館へ外出しないしインターネットというものをあまりしない為フリンカについてやはりそれ以上の知識を持ち得ることができなかったし、したところで、私はフリンカではないのだ。

 やがて、ガーデニングの手伝いで、ウワキ、上木が、庭園の上層を成す樹木のことでもある知識を得た。
建築では、継ぎ手や組手において上になるほうの木のことらしく、下木も存在していた。

ときに私を木に例え、そして、政治家に例えてまで彼は何と戦ったのだろうか。
 私を好いているとおっしゃったのに、私自身を呼ばれることはなく、いつからか私の名前はウワキダであり、フリンカのようだった。
2019/04/22 14:21



25
「フリンカではありません!」

私はある日、ついに涙を堪えながら叫んだ。

「ウワキダでもありません!
なんですか、あなたこそ、私の名前をフリンカと間違えたままじゃないですか!」

《彼》は、激昂した。

「知らないフリをするのか、この、たわけ!」

《彼》は恋愛というものの経験が豊富だった。
そして自身の理解を押し付けることに充足感を得ていたのだ。あまり理解のない人を見ると自分と相手の間にある暴力的な気持ちをおさえきれないのだろう。
「フリンダ!」

彼は新たな変化系呪文を唱えて、私を殴り付けた。
わけのわからないことばかり唱えては、一方的に殴る、蹴る。
あまりにも私を否定する不気味な存在となっていた。
彼は私の名前を呼ぶことはなく、いつも違う方の名前を呼びつけていた。
特に気に入っている方が、フリンカ、フリンダ、ウワキダ。
でも、それらが誰かについて聞こうとすればいつもより顔を真っ赤にさせた。

「ふざけてんのか? お前がフリンダだろ! なぁ?」

私は、いつのまにかフリンダという名前に改名したのだろうか。
フリンカは政治家。
フリンダは、オーストラリアにはフリンダーズ川があるという話は聞いたことがあったので、その集落の方なのだろう。
ウワキダは、わからなかった。浮気なのか、上木田なのか。

 ただ名前を呼ばれたかったのに、彼は、フリンダしか見ていない。
2019/04/22 20:32


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 558