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作品名:現実と異世界の24時間半永久活動 〜反転は12時からの落ちこぼれ達のシンデレラストーリー〜 作者:晃矢 琉仁

第1回 虚ろ気な日常
 夢の中は自由だ。



気だるげな日常には常に「不自由」が介在し続けている。



そんなことを朝の目覚めと共に感じた。



自身の体の鉄分に鉛が混じったような重さを感じつつ、

体を起こして布団を払いのける。

カーテンを開け、

眼球の奥まで貫かんばかりの日光が埃っぽい自室を照らした。



なんてことはない、物数の少ない寂しい男の部屋だ。



今年で17になって巷では色気づく歳と噂される若者真っ盛りでありながら、

紙くずから半開きになった漫画が床に散乱する淀んだ空気が

漂っていそうなだらしない空間に平気でいる。

まだぼんやりとした視界が鮮明になる前に、

ベッドから立ち上がるとクローゼットまで目を擦って歩きいつも通りの制服に身を包んだ。



着ていた寝間着は放り飛ばされ、



部屋の片隅にたまるガラクタに被さった。

幼少期に夢中になった戦隊もののおもちゃも今やスペースの邪魔だと隅に追いやられ、

たまに足の裏に刺さることによって苛立たしげに存在を思い出されるものになっていた。



部屋は薄暗いことがいつもであり、



その方が落ち着いてしまう精神をおかしいとも思わず、

せめて嫌いな1日の始まりくらいはその光に当たって体を起こすが、

すぐには部屋を出れない。

この暗い自室を出ることが一番の億劫なのだ。

今日は自分でこうして安息の場を出ていかなくてはならないことが何よりもの苦痛でもある。



普段は隣の部屋の主である3歳下の妹・美玖(みく)が、

起こしにくることもしばしばだが部活の朝練のついでに叩き起こされるだけで、

今朝は朝練が無くぐっすりと寝ているというわけだ。

ちなみに冴えない兄貴に比べ美玖は多彩で友達もたくさんいると勝ち組であり、

こんな男に優しくしてくれる女の子など彼女だけである。



「さて...じゃあ行きますか」





気の抜けた一声と共に自室を出た。





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「じゃあ、行ってきまーす...」





朝食を終えて外に出る家のドアはより一層重く感じられるものだ。



そして差し込んでくる日光と暑さは全身を襲うようなものであった。

季節が夏だからといって尋常ではない熱気に押し戻されそうになりながらも進んで家の敷地を出た。



恰好は制服でも最も軽装な夏服であり、



ただでさえ嫌な学校生活でも息苦しい制服の辛さは緩和されているようなものだが、

それでも暑苦しさに汗が噴き出した。

うちの学校は昼休みが正午前から始まるくらい午前の授業が早く始まる。

そのためやたら朝早く起きる羽目になるくせして、

帰りが早いなんてことは無い。



進学校と謳って授業ぎっしりの毎日が新高校生をお出迎え、

だからと聞いて在籍する生徒の全員が真面目くんや真面目ちゃんでないのが辛い。

個性の強い奴らが集まるのは私立の宿命なのか・・・

それともクラス・・・俺の実力の悪さのせいか・・・

気の合うやつに学校で会ったことが2年生ながら入学から一度もない。



だから朝から行くのもうんざりだ。

そもそも朝なのにこの猛暑は一体なんだというのか



住んでいる土地は住宅街が建ち並ぶ比較的都会に位置しているが、

去年はここまでの暑さはではなかった。

地球温暖化とかのせいだろうが、

とても頑強とはほど遠い肉体である自分にはたまったものではない。

ただでさえ足取りの重い登校中だというのに...





それに今日の食卓での話題も暗い気分の俺にのしかかってくる様なものだった。





親父はいつも通り新聞とスマホを交互に見ては空いた手でトーストを口に運び、

ただ胃に押し込む食事を取っていた。

母も厨房にいてその背中が忙しなく右にに左に動くのを眺める普段のものであったが、

美玖がいないためか話を聞かない父はスルーされて会話の相手の矛先が俺に向いたのだ。





「最近学校どうなの〜?友達出来た〜?」



一瞬咥えていたトーストのパン屑が気管に入り咳き込んだが、何とか平静を装って



「うん、も、問題ないよ」





と小さくぎこちない返事をした。



正直話し相手くらいはいないこともないが高校に入ってから遊びに行くことも、

我が家にお呼びするほどの仲良しさんはいなかった。

頻繁にうちと友人の家を行き来する輝かしい放課後を満喫していたのは、

せいぜい小学生くらいまでであり、

中学から高校と年齢が上がるにつれて今までの友達と呼んでいた者たちとも疎遠になってしまっていた。



今でも昔に交流のあった子の名前を挙げて遊んだりしないのかとか、

「うちに誰か呼んでも構わないのよ?」なんて言われた日には苦し紛れに、

「そいつとは家が遠いんだ」とか言い訳をするがそれも辛くなってきていた。





「なんだぁ龍之助?最近よく聞くボッチってやつか?」





まるで話を聞いてなくて3回くらい同じ説明をさせられる父に今回に限って、

聞き耳を立てられていたらしい。ふっと笑ってみせたが、どう考えても不自然だ。

空気を変えるべく今日の朝刊の中身などを咄嗟とっさに聞いたりして誤魔化したが、

変にいつもはしないことをしたので余計勘ぐられたのではないかなど、

それこそ余計なことを考えながら私立のくせして少しぼろい校舎の敷地にトボトボと入っていった。



そうして着いた学校の教室はいつも通り騒々しさに溢れていた。



色んな喧噪けんそうが飛び交いどうにも傍から見れば楽しそうな景観だが、

こちらからの眺めはそう良いものではない。

狭い教室の中でスルスルと人を避けて教室の端っこの席に座って

小さく溜息をついてから腕に顔を埋めて、

いつも通りの休憩中です、の構えを取った。



なぜこんなことをするかと言えば答えは簡単、朝から話すような相手はこの教室に存在しないのだ。



自分の存在がなくともクラスは何の問題もなく日常が進むように、

自分もまた今いるクラスメイトがたった今消失したところで何ら影響は無いと割り切っていた。

そうして勝手にお互いまるで無い者同士の関係を保っているのだ、と平静を保っていた。

何らこの状況に変なところが一つもないと自身に言い聞かせながら...



そう、この孤独こそが日常の辛さだ。







となればまだマシであったが、こんな自分にもわざわざ声をかけてくれる者がいるのだ。





「おい、城ケ崎。ちょっと廊下に出て来いよ」





荒っぽく肩を捕まれて、引き起こされたあげく見る顔が友達でもなんでもない男だとげんなりする。



何より第一声から憎たらしいニキビ面が浮かんでいたのだが。

なるべく猿みたいな扱いで目を合わせないようにしながら首を縦に振ると、

その男は二人の取り巻きの待つ廊下に歩いて行った。

奴の名は土井(どい) 源太(げんた)、この私立の進学校には似つかわしくない不良だ。



ちなみに俺の名は城ケ崎(じょうがさき) 龍之介(りゅうのすけ)。



苗字に城が入ってて家が大金持ちそう、という非常に馬鹿らしい理由で目をつけられた原因だと考えると

苗字さえ違ければ・・・そう思ってしまう。



話を戻すとその土井は、不良と言っても所詮は私立に通わせてもらっている裕福な家庭の子供で、

よく見るヤンキー漫画の様なとんでもない野郎かというと小悪党に近い男だ。

裕福なのになぜ金をせびってきたりするのかは未だに分からない、取り巻き含めて。



土井はそれなりに背は大きいが、

細い体型が奴自身が演じたい不良っぽさにチープさが出ている。

取り巻きはそれぞれ玉木(たまき)と呼ばれる双子で、兄は洋(よう)で弟が稔(みのる)だ。

どちらも土井とは対照的にずんぐりむっくりと言った印象だ。



と冷静に外見だけを捉えれば恐れるような3人組ではないが、



実際1対3となれば臆病な人間である自分はついつい言いなりになってしまわざる負えない。

さて...今度は何の要求だろうか、始まりはコンビニで立ち読みしているとこを絡まれ、

下らない漫画を買わされたことを皮切りに荷物運びやらパシリやら、

列挙すれば様々なことをさせられてきたが...



今度は何の用なんだ・・・?


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