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作品名:青春ネバーモア 作者:にゃんくるないさー

第2回 2


   (2)フレーム・イン

 買うものは、なるべく祭りっぽさを優先した。
 本人から注文された。じゃがバター。
 嫌がられはしないだろう。りんご飴。
 申し訳ていどに変装ができる。お面。
 頭と両手にフル装備で歩いていると、はたから見ると祭りを満喫しているのは登志郎のほうだ。
 じゃがバターと言いながら、本当のところはマーガリンと塩とで味つけされたおいしそうな匂いに誘惑されつつ、アキを捜しもとめる。
 これも慣れというのか。さほど時はいらなかった。
 学生の頃みたく、ほどなく相手の姿を見つけだす。
 ゆるやかであたたかな印象をたたえて、相手は輝きをともなって立っている。
「まぶいな。アキの奴」
 つぶやいた声は、それよりも大きなかけ声のうずに、すんなりとのまれる。
 祭り神輿を引く老若男女が、活気よく人混みを散らし、ぐんぐん進行する。
 やってくる神輿の上方部で見得を切る人形を一瞥して、登志郎は足を交わす。
「アキ。待たせた」
 開放された道路の端で動画を撮影するアキ。
 その目もと口もとには、おっとりと微笑の色がうかべられている。
 アキの視界に映りこんでいるのは、人間だけではないはずだが、分け隔てなくすべてを受けいれている。
 いわゆる幽霊と呼ばれる存在からすると、はたしてそれは望ましいのか否か。
 あくまでも個人差。それぞれの人格に依存するものだろうが、たとえば人間に憑りついて悪事をしたり、ラップ音とやらを鳴らしてみたりと、どうにも善良な光景を連想させない手合いが幽霊というものだが。
「友達が来たから、またね」
 カメラ越しに左手を振って、アキは誰か≠ノあいさつした。
 通りを行く祭りの参加者。特に同年代ほどの数名が、自分に向けてやっていると気をまわして、それに応じている。
(まあ……ああいう奴が普通なんだろうな)
 霊能力をもった人物がこんな場所にいるだなんて、直感するどく思いあたれ、というのが無理難題。いまどき、オカルトブームが激しく再燃する兆しもない。
 そこに美人霊能者という肩書を付け足したとして、ちかぢか年号が変更されるエンターテインメント隆盛の日本では、客ウケが悪いことは変わりないだろう。
「あっ。りんご飴……」
「好きかなと思ってさ。苦手か?」
 こちらの手にする、シロップでテカテカと光る定番甘味に、アキはつぶやく。
 好みでなければ処分に困るので尋ねると、おちつきはらって首を横に振った。
「だけど、デートには不向きな食べ物だと思うな」
「あん? そういうもんか?」
 交際経験の多くはない登志郎は、相手への言葉に感情がのらない。
 べつに、りんご飴くらいなら異性が食べるぶんには可愛げがある。
「りんご飴は色がうつるのよ。舌が真っ赤になるの」
「…………だから?」
「だからって、わかんない?」
 困り調子で、アキに尋ねかえされる。
 察しが良くないな。という空気感が、やんわりとかもしだされていた。
 申し訳ないが、目ざとく鋭敏になれるのは、あくまで危険対処のみだ。
「わかってたら無駄に訊くかよ。べつにいいじゃねぇか。舌が赤くたって」
「それは……ただお祭りをまわりたいだけなら、そうだろうけど」
「ほかに何するってんだ? 飲み食いして、花火でも見て、お開きだろ?」
 続けて質問すると、相手はもの言いたげにしたのち、うつむいて唇をむすぶ。
 そうしてから十秒後。じつに頭が痛そうに、カメラをひたいへと押し当てた。
 知恵熱をおさえているらしいが、そこまでされると登志郎もやや引っかかる。
「アキがそんなになるとは、どうしようもなくハズレた態度らしいな」
「トウシロウは――こういうのが良いところでもあるし」
 言外に伝わってくる指摘。『でもある』の部分がミソだ。
「期待にそえないのはしかたない。ジェンダーバイアスは俺の苦手科目なんだ」
 あてこすりを披露しながら、貢ぎ物を献上しようと相手に両手を差しだした。
 カメラとりんご飴を交換するみたく持ち替え、じゃがバターも手渡しおえる。
「偏見がないってことだから。憧れてたりもするんだよ?」
「頑張ったな。いい会話のピッチアウトだ」
 なげた褒め言葉へは、キャッチャーマスクでなく、お面をかぶせて対応した。
 赤と銀との光の巨人は、アキが変身するには似合わない。
 記念にこの姿をカメラを用いて撮ろうと試みるものの、使いかたがわからず、もたついた隙にレンズを手指でおおわれてしまう。
「思い出を残すなら私にまかせて」
 ちょいっと、すこしひょうきんなしぐさで、アキがお面を顔から持ちあげる。
「せっかくだから、笑ってみてよ」
 じゃがバターの紙カップを街路樹下に安置し、こちらを隣にまねいたアキは、日ごろからしているのだろう手慣れた操作で、パシャリッと撮影を完了させる。
 確認された画における登志郎の表情は、お世辞にもほがらかとは言いがたい。
 笑顔をつくろうとしたのが、かえってあだとなり、ぎこちなく崩壊していた。
 顔面崩壊というのは実際に起こるんだな。と、あたかも他人事みたいに思う。
「俺だけ切り取って、魔除けに利用できそうな映りだな」
「ううん、とっても素敵。これだけでも来たかいあった」
「……悪口とか、ほんっと言わないのな。おまえ」
 指先の爪をつかい、相手が持つカメラの表面を二度たたいてみる。
「いいご主人に使われて運があるな。あやかりたいぜ」
 気まぐれにふざけてみせれば、アキはうれしそうに、瞳を大きくさせた。
 相手のなかにいる大人が席を譲り、あどけなさのある乙女が主権を執る。
「実はね。この子には名前を付けてあるの」
 カメラをかかげ、興奮した様子で、アキが声を発する。
「レノーアというのが名前なんだけど、この子はすごく賢いのよ」
「そ、そうかよ。賢いってのは、つまり機能的な意味でのことか」
「そうなの。レノーアは、ほかの子とはまるで使い心地がちがうんだからっ」
 自慢話がしたくておさえが効かない。という心情を、体外に気勢のかたちにて放出してみせる相手は、めずらしく愛嬌があった。
 上品さからこぼれる色気は消え、おちつきに裏打ちされた清楚さもはがれる。
 満足するまでおしゃべりしたいだけな、そんなアキはかなり可愛い。
 子供を甘やかしたくなる男親の気持ち。それが今だったならわかる。
 ずいぶんとひさしい、くすぐったい感覚が、胸の内側を駆けめぐった。
「補正があるから画がしまるし、暗がりはオートで照らしてくれるし、保存容量だってメモリ数がたっぷりで心配がいらないの。あと、ほかにもアクセサリーの対応も並みの製品とはくらべものに――」
「待て待て待て待て。そこまでカメラのこと俺はわかんねぇよ。素人なんだぜ」
「トウシロウだけにね」
「いや。うまくないぞ」
 舌がまわるだけにとどまらず、相手は軽口さえもたしなんだ。
 デジタルカメラの進歩や発展について、いつも誰かに話したいという願望を。
 いや。レノーアと名づけた愛機について、深く語りつくしたいという情熱を、日々アキは内側で肥え太らせていたのだろう。
「中学の時も、アキはカメラを持ち込んでたもんな」
「あれには理由があったでしょ。悪さしていたように言わないで」
「胸張っていいことしてたと言えるわけでもないだろ」
「――そうね。すべて私の自己満足なことは、認める」
 記憶をたどってか。彼女の両目にやどる対象がとおのいた。
『私は、そこまで霊能力がすぐれてるわけじゃないの』
 おどけ調子の声音で、アキがそう言ったのは、夕暮れの校舎でのことだった。

 ロマンチストなら運命だとでも形容するだろう。ふたりの関係が変わった日。
 ふだんからしているように談笑をしていたとき、アキが登志郎へと向かって、
「放課後。手伝ってもらいたいことがあるんだけど」
 と、協力をもとめてきたのが事の始まり。
 アキがやってほしいと頼んでくるなら、おかしな要件ではないだろうとふみ、登志郎は約束どおり、下駄箱で相手と合流した。
 現れた相手の手にはデジタルカメラが握られている。
「お願い。おどろかないでね」
 操作するカメラをこちらに覗きこませ、相手はそのまま辺りをフレームイン。見慣れた校内を映していく。
 これにどういう意味があるのかといぶかしんでいれば、そいつは突如として、登志郎の注意を引きつけた。
 カメラの画面に映りこんだのは、小さな女の子。しかし、画面のなかにいる子には、年代に見合った精気がない。というか、この子はなぜ学校にいる?
「――……っ!」
 声をあげかけた登志郎は、アキの言葉を思い出し、こらえてのみこんだ。
 カメラから視線を動かせば、女の子の姿は自分では見ることができない。
 あくまでアキが触れているカメラ越しでしか、その姿は確認できないらしい。
 まるで眼鏡またはコンタクトレンズみたいだ。霊感のない登志郎は、自力では幽霊が視られないけれど、アキの手助けがあれば幽霊を視ることが可能になる。輪郭のピントを合わせることができる。
 はっきりと目視してしまったら、とても存在を否定することはできなかった。
 この世の中に、幽霊はまちがいなく居るのだ。
 そして、薩摩アキには交信する力があるのだ。

「あの幽霊。できるだけたくさんの友達と遊びたかったんだよな」
「ええ。私から誘えたのはあなただけだったけれど、あの子は満足してくれた」
 成仏した。なんて言うと大げさだが。
 あの子がうれしそうに、光に融けたのを覚えている。
「そこで終われれば、不思議な体験で済むんだけどな――」
 登志郎が肩をすくめるに、意図を汲んだアキが眉をさげた。

 女の子が消失したことに遅れて、ふたりのところには思わぬ来客があった。
 風紀委員会に所属している先輩。関香奈枝(せき かなえ)である。
 正義感があり、他人から頼られることをよろこびとする香奈枝には、放課後の校内で何やら疲れた様子の後輩男女は見過ごせないターゲットだったのだろう。
 もちろん、登志郎とアキのあいだには不純なかかわりなどありはしないため、かるめのお小言ていどで済まされた。
 が、しかし。
 この縁から登志郎は気に入られ、香奈枝に絡まれることが増えた。
 香奈枝は、惜しみなく内心をあらわにするタイプだった。そういった機微には鈍感な登志郎であっても、好意の種類がわかるほどに。
 彼女はこちらに、恋愛感情をもっているようだ。
 みずからの感覚を意識上にうかばせることは、これが二度めになる。
 けれど、一度めとはだいぶ心もちが異なって、胸がざわざわとした。
(アキに相談しようかとも考えたが、あの頃、あいつは……)
 正確な表現ではないかもしれない。当人からすれば、誤りなのかもしれない。
 それでも登志郎にすれば、当時のアキはいきなり、よそよそしくなっていた。
 まるで避けているように、声をかけようとすると、そこから立ち去っていく。
(俺はアキを追うのをやめた。離れるなら、理由があってのことだろうからな)
 嫌われることをした記憶はない。とはいえ、自分では思ってもみない理由で、避けられているかもわからない。だったら、どうしようもないことだと思った。追いまわし、余計に嫌悪されるなんてのはつらい。
 ――そうこうしているうちに、登志郎とアキは、談笑することがなくなった。

「あのあとも、いろんな子たちに会ったよ。みんないい子で、寂しがりだった」
「そうか。よく知らねぇけど、未練がなくなるのは得したのと同じなんだろ?」
「ええ。私は、そう思いたい」とアキはやわらかな笑みでうなずいた。
 だが、次の瞬間。そのおだやかな表情はくずされ、恐怖心にそまる。
「――っ!」
 登志郎は緊迫に鼓動を速めながら、アキの視線をたどり、祭り神輿を見やる。
 数分まえに一瞥した人形のほかに、銀色の前髪をたらした人物がそこに居た。
 黒いコートを身に着けた青年。彼こそが、アキの言う『追手』だと理解する。
「任務を果たしに来た。今生より対象――薩摩アキを破棄する」
 淡白な語り口で告げ終え、『追手』は身をひるがえして、祭り神輿から降りた。
 西洋人、と見えた。稲光を想わせるような銀色の刺繍が各ポイントになされた黒いコートにからだを包んでいるせいもあって、シルエットは細く、華奢とさえ感じるほどだ。
 明確なイメージがあったわけではないが、銀髪の青年は『追手』という単語を張り付けるにはそぐわない印象を受けた。仮に鉄拳で話しあうことになっても、自分が問題なく打ち勝ててしまえそうだと、登志郎はやや警戒をゆるめる。
 アキには恐ろしい相手でも、こちらにはそこまで……
「面倒はぬきに、手早く終わらせてもう」
「――! トウシロウ!!」
 するりとコートの内側を探った『追手』は、懐中時計を取り出して示した。
 それを目にするのとほぼ同時に、アキが手にしていた物すべてを放り捨てて、こちらに両腕をまわし抱きついてくる。
「!?」
 いきなりなんだ。なんて口にする間もなく、続けて周辺を駆けぬけた閃光に、あちこちから――催しの一つだと思ったのだろう――衝動的な反応がこぼれた。
 勢いをつけられた分。アキのことを支えながら踏みこらえ、登志郎は即座に、閃光が通り過ぎた会場一帯へと目をくばる。
(……おいおいおいおい…………っ)
 自分もすこしは成長していたということだろうか。
 あの中学時代のように、声をあげそうになったりはせずに済んだ。
 だが胸中は違和のうずにからめとられ、広がる光景に思考が追いつかない。
 登志郎とアキ。ついでに『追手』以外のすべての者が、挙動を止めていた。
 見わたす視界にいる人々。夏祭りに参加するみなが、直立不動となっている。
 個々にわりふられた命の時間が。すっぽりと抜き取られてしまったみたいに。異様にも楽しげな顔色を表面にぬりつけたまま、誰しもが眉ひとつ動かさない。
「薩摩アキ……おまえは、本当に厄介な奴だな」
 両目をつむり、ちいさくかぶりをふって、『追手』はこちらへと歩を進ませた。
「おまえ一人を対象に、オレがどれだけ労力と時間をかけていると思っている。往生際が悪いにも限度があるぞ」
 懐中時計をコート内にしまいながら、『追手』はアキに対して話しつづける。
 その濁りけのない瞳は、こちらの心もちのせいか、冷ややかに感じられた。
「オレは慈悲深くも、事前におまえに勧告した。覚えがあるはずだな?」
「ええ。あなたは私に話してくれた。だから、私は今日、此処に来たの」
 精神的な苦痛がともなわれた横顔で、アキはさえぎることなく、『追手』からの言葉に受け応える。
 会話からは、彼女と『追手』に、それなりの交流があったことが察せられた。
「わからないことを言うな。承知していて、なぜ逃げる?」
「ちがう……逃げてなんかいないっ!!」
 声量も口調もはっきりとした宣言に、隣にいる登志郎は思わず目を見はる。
 此処まで足をはこんだアキの真意など、もちろん自分もわかってはいない。
 だけれども、アキが生半可な気持ちで『追手』を相手どっているわけではないことだけは、これでじゅうぶんに伝えられた。
「なんかよ。ちょっと疎外感を感じてんだけど、これ、気のせいじゃないよな」
 登志郎はアキから離れ、一歩『追手』へと向かって踏み出した。
「おかしな手品ができるみたいだが、誰なんだよ。あんたは」
「……おまえもわからない奴だ。今、優先して質問するのがそれなのか」
 ちらりと視線を合わせた『追手』は、あきれた様子で口唇を動かす。
 超常現象をひきおこす能力があっても、感覚的には一般よりらしい。
「とはいえど。問われて名乗らないのも無粋だな」
 右腕をうらてにまわし、光の反射とともに、『追手』は何か金物を掴み取る。
 武器――と呼んでいいだろうそれは、類型のない珍妙なデザインをしていた。
 形でいえば刀剣に見えるも、刀身を囲んだ肉食恐竜の骨を連想させる装飾が、インパクトをもって見る者の判断を悩ませる。
「こいつの名前はスナーク。そして、オレの名前はリドル」
 丁寧に武器といっしょに自己紹介を済ませるリドル。
 ひょっとしたら、生真面目な性格なのかもしれない。
 などと、登志郎がつけいる隙がないか探していると、それを証明するみたく、「いいや、いちばん新しい名は〈法復者(ほうふくしゃ)〉か。もっとも、これはオレだけの名じゃないが」と小気味よさそうに彼は訂正をつぶやいてみせた。
 武器を片手に面相にうかべるにしては、ほがらかすぎる笑み。
 そこから、一度息をついて、冷静沈着に両目をしばたかせる。
「告げたところで、おまえたちは破棄される末路。今度は覚える暇≠ヘない」
 リドルは武器――スナークと呼んだほうがいいんだろうか?――をかかげて、刺突の構えをとった。
 標的との距離を測りたがえないため、前方へと突き出される左手。狙い定めて胸部をえぐるため、後方へと引きつけられる右手。
 なんら奇をてらっていない、一本気な予備動作。
 言動。行動。そのふたつに顕れたるリドルの性格は、どこまでもまっすぐだ。
(話がまったく通じない奴じゃないなら。いちかばちか。仕掛けてみるか……)
 登志郎はさらに一歩を踏みこみ、大きく左手の指を開いた。リドルを正面から見つめ、実行に移されかけている刺突を抑止しつつ、出来の悪い異論を唱える。
「リドル。あんたが言うほど、俺たちの末路は決まってないんじゃないか?」
 唇からころがした声に、彼はかすかに目もとをけわしくさせ、続きを待った。
「経緯は知らないが、あんたはアキを破棄しようとして、見事に取り逃がした。こんなとこに来るまえに、本来であれば、あんたの任務は達成されてたはずだ」
 耳をかたむけているリドルが、鼻を鳴らし、ゆるやかに構えを解く。
 アキのほうも、何を言いだしたのかと、かたわらまで近づいてくる。
「さっきやった時計の手品もそうだな。本当なら、俺がこんなふうにベラベラと話ができる暇≠ネんてないはずだったんだろ?」
 首をかしげる動作をまじえながら問いかければ、リドルは口角をあげ応えた。
 生真面目さのなかにユーモアのセンスも持ち合わせてくれていたのは幸いだ。
「なるほど。たしかに、すでに二度までもオレの思惑は外れている。この言葉に信憑性など無いに等しい」
「ああ、そうなるな。言っちまえば、あんたは土がついた状態なんだ、リドル。ただただ任務を成したとしても、それで土を払ったことにはならないと思うぜ」
 さらに言葉の追い打ちをかけてみると、リドルはいよいよ笑い声をもらした。
 拍手の代わりなのか。スナークと右肩をつかい、一定の音調まできざみだす。
 完全に登志郎の意図を、あちらは汲んでくれている。
「面白い。薩摩アキがおまえに会いに来た訳がわかってきたぞ」
「どうも。『わからない奴』から評価が変わって俺もなによりだ」
「ふふっ、それで? どんな取り組みをすれば、その土が払われると考える?」
「そうだな。せっかくアキをはるばる追いかけてきたんだから、ここはひとつ」
 一拍の間をおいたあと、登志郎はふたたび、辺りに目を向けた。
 アキと夏祭りの参加者だけでも助ける方法は、もう脳裏に素案がある。
「リドル。鬼ごっこって、知ってるか」


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