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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第49回 弐の十九
 その時、扉が開いて、お客さんが入ってきた。風が入ってきて、それに乗って一枚のチラシが僕の足もとに舞い降りた。何気なく拾って見ると。
「帝都少女歌劇のスタア、福子小夜、公演案内」
 みたいなことが書いてある。
「なんて読むんですか、この名前? 人の名前だと思うけど?」
 浅黄さんが微妙な表情をした。なんだろう、と思っていると、千宝寺さんが身を乗り出して、僕の手にあるチラシを見る。そして、千宝寺さんも微妙な表情になった。
 なんなんだろう、ホントに?
 千宝寺さんと浅黄さんが顔を見合わせ、アイコンタクトか何かで、とりあえず、千宝寺さんが説明してくれることになったらしい。
「『ふくご さや』と読む。宝塚に、小夜福子(さよ ふくこ)というスターがいた。今の、この時代は、月組に所属している。その人から『来てる』」
「来てる?」
「その名前に由来する、という意味だ」
 その言葉に、ちょっと考えてみた。由来する、ってことは、悪い言い方をすると、パクったってこと。つまり。
「モノマネとか、そういう系の人ですか?」
 昔、榎本健一(えのもと けんいち)、通称「エノケン」ていうスターがいたそうだ。そして、地方で「エノケソ、来たる」みたいな興業があって、たくさんの人が集まった。しかし、出てきたのは全くの別人。文句を言った人たちに「よく見てくれ、エノケソ(えのけそ)と書いてあるだろう」と、興行主が言った、なんていう笑い話を、爺ちゃんから聞いたことがある。あんな感じかな?
「……いや、そうじゃない」
 千宝寺さんは首を横に振り、そして、溜息をついた。
 浅黄さんが苦笑いを浮かべて言った。
「新(シン)ちゃんだよ」
「しんちゃん?」
 千宝寺さんが言う。
「白倉新(はくら あらた)、テイボウのメンバーだ」
 ……。
「え?」
 確か、白倉さんって、天夢ちゃんと同じ高校二年生だったはず。それが、少女歌劇のスタア?
「……もしかして、白倉さんって、タレントさん、ですか?」
 もし「現実でのステイタスが冥空で反映される」っていう法則があるなら、だけど。顔を見合わせた二人は、ちょっと困惑したようになって、まず浅黄さんが言った。
「あいつは、いろいろ『特別』なんだよ」
「ある意味、『規格外』のやつでな」
「規格外?」
 なんか、二人が白倉さんのことを語るとき、空気そのものがおかしい。
 浅黄さんが、その場をしめるように言った。
「このチラシがあるってことは、そのうち、ここで会える。上石津に帰ってくるだろうから、本部でも会えるさ。その時に確認してくれ」
 なんか、すごく気になる。どんな人なんだろう、白倉さんって?


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