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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第25回 壱の二十三
 それじゃあ、まずいじゃないか! また、形を変えて現れるって事だし。その時に、発見できるかどうか、わからないかも知れない。ということは、ディザイアの暗躍で、歪みが蓄積し放題って事。
 辺りを見回し、天夢ちゃんが言った。
「そんな事が出来るのは、相当強い欲念を持っているか、あるいは、その行動の根底が、『生き死に』に関わっているか、だから、なんだそうです。でも、完全には、痕跡を消せないらしいんです」
 と、どこかに視線を固定する。
 僕も、釣られてそっちを見る。そこにいたのは。
「……沢子さん?」
 呉服屋の奉公人、細川沢子さんだ。
 僕は沢子さんに近づいた。
「沢子さん、どうしたの、こんなところで?」
 僕に気づき、沢子さんが不安げな面持ちで言った。
「心さん。……私、旦那様の言いつけで、この近くのお宅に、来たんです。そのついでにここに来たんですけど」
 と、空き地を見る。
「ここ、前は、天空化神教の教会があったんです。でも、今日は、ここに何もなくて」
 僕と天夢ちゃんは顔を見合わせた。彼女は、化神教のことを覚えてる! 小声で天夢ちゃんが言った。
「……ディザイアの痕跡を追う事が出来る存在……『トレーサー』です」
 そして、天夢ちゃんは、懐から何かを出した。この間とは違う御札だ。
「あの」
 天夢ちゃんがそう言うと、沢子さんが、天夢ちゃんに顔を向ける。その目の前に、天夢ちゃんは、その呪符をかざした。
 周囲に、軽度の静電気のようなものが、一瞬だけ、走る。
「なに、今の!?」
 ビックリしている沢子さんが、辺りを見回す。すばやく呪符を背後に隠し、天夢ちゃんが小声で言った。
「救世さん、適当にお話しして、彼女から化神教の事を聞き出してください」
 なんか、考えがあるらしい。頷いて、僕は言った。
「沢子さん。この間は聞きそびれたけど、ていうより、聞かないようにしたけど。あの合崎(ごうざき)っていう人と、化神教と、君と。どういう繋がりがあるのかな?」
 ためらいながらも、沢子さんは言った。
「合崎さんから、お金を援助して欲しいって言われて。その理由が、天空化神教で入り用のものがあるけど、それを外国から買い付けるには、資金が足りないって、説明されたんです。私に、すぐに用立てできるような額じゃなかったんです。で、合崎さんにここに連れてこられて、教祖様から、合崎さんが誠実な人で、私を騙すような人ではないって。その『もの』を入手できれば、衆生済度(しゅじょうさいど)のお役に立てるって言われて」
 そして、空き地を見る。
「でも、あの時、合崎さんが化け物に変わってしまって。それがどうにも信じられなくて、それで、ここに来てみたんです」
 どういうことか、おおよそ見えてきた。おそらく、合崎……合崎(あいざき)さんと村嶋さんは、グルになって、同じような事をしていたのかも知れない。
 その時、天夢ちゃんが僕の肩を指で軽く叩く。「情報はとれた」ってことらしい、一回、小さく頷いた。
「ごめんね、沢子さん、イヤな事、聞いて」
「いいえ、いいんです。私、何かされたわけじゃないし。誰かに聞いてもらって、ちょっとだけ、気が楽になりました。……そろそろ、帰りますね」
 そう言って、僕に頭を下げ、沢子さんは去って行った。
 それを見送り、天夢ちゃんが、手にした呪符を、空き地と、道との境に置く。そして、
「あたしが組む通りに、両手の指を組んでください」
 そう言って、独特の組み方をする。両手の中指と薬指で、菱形の空間が出来てる。
「『キツネ窓』っていいます。もともとは妖狐の妖術を見破る印契(いんげい)ですけど」
 僕もその組み方をする。天夢ちゃんが、その菱形から空き地を見たんで、僕もその通りにした。
「……なんだ、これ……?」
 指越しの僕の眼前に広がっているのは、空間を占める、巨大な蜘蛛の巣だった。
 まるで、信者(エモノ)を待ち構えて、全てを喰らい尽くす、化け蜘蛛の巣のようだった。
「これがあるっていうことは、まだ、完全に撤収できてません。今、サワコさん?から『氣』をコピーして、ここに呪符で固定しましたから、必ず、ここに戻ってきます。今、四時半ですから、十時半……遅くとも三刻(さんとき)後、六時間のうちには」
 今夜が決戦らしい。


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