小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第179回 捌の十五
 空中にいくつもの「咒字」や、記号、図形が浮かぶ。その気配に、ムラマサが上空を仰ぎ見る。そしてその咒字を拾うように、銀色の玉が空を舞い、なにかの咒符が完成した。
 その咒符もろとも、銀色の玉がムラマサの胸に命中するも、たいしたダメージには、なっていないらしい。
 そして、声がした。
「百邪鬼断符(ひゃくじゃきだんふ)!」
 また、さっきと同じ咒字が浮かぶ。銀色の弾丸が、咒字を拾い、今度は背後からムラマサを撃つ。
「百邪鬼断符!」
 同じ咒符が完成し、今度は右からムラマサを撃った。
「百邪鬼断符!」
 次は左から。
 だが、ムラマサには、ほとんど効いていないらしい。
 刀を降ろし、ムラマサが天夢の後方を見る。
 天夢も、そちらを見る。
「ヨロイ」を身に纏った、紫雲英が、二十メートルぐらい先で、銃を構えていた。
 紫雲英が、新たな銃弾をセットし、キーワードを発した。
「中央雷神符!」
 今度は、浮かぶ咒字の数も、線の数も、さっきより格段に多い。それだけ強力なのだろうが、生成まで時間もかかるだろう。自分には効かないと思っているのか、ムラマサは、低く、くぐもった笑い声を立てている。逃げるようでも、迎え撃つようでも、防御するようでもない。いや、それどころか、天夢に対して注意を払ってさえいない。
 紫雲英が唱えた符名、「雷神」に思えた。となると、雷……電気だろう。
 天夢は、英語はそれほど得意ではないが、雑学なら自信がある。もっとも、それは主に刀剣類など、武術関係に偏ってはいるが、それでも、一般教養や、マニアックな方面まで、いろいろと仕入れている。
「一の柄、土。謹請、大山祇(おおやまずみ)の神。神力(しんりき)招呼(しょうこ)火急如律令(かきゅうにょりつりょう)」
 クリスタルの咒符を出し、小声で力を呼び出す。
 黄色い光で満ちた咒符を、もう一つのスリットに差し込むと、地の力が満ちてきた。
 紫雲英の咒符が完成する直前のタイミングを見計らい、地の力でムラマサの前の地面を砕く! 粉塵が舞い上がった。それと同時に、紫雲英の雷弾が命中する。普通なら、ムラマサの体で、雷撃が発動して終わるところだろう。だが。
「おおうっ!?」
 ムラマサの周囲で舞う粉塵の粒子が帯電し、その周囲に雷電の檻が形成された。
 すかさず地の咒符を抜き、天夢は次の咒を唱える。
「三の柄、火! 謹請、迦具土(かぐつち)の神! 神力招呼火急如律令!」
 赤い光を放つ咒符を差し、火の力を宿した剣でムラマサに斬りつけた!
 剣の「火」を受け、周囲に滞留する粉塵に着火。粉塵爆発が起こり、その衝撃は天夢を二十メートル近く吹き飛ばした。
「天夢ちゃん先輩!!」
 紫雲英の声がしたかと思うと、何かに当たった感触があった。すぐに「紫雲英が受け止めてくれた」ことがわかった。
 どうにか体勢を整えて、ムラマサを見ると。
 まだ、立っていた。
「うそ……」
 やはり、ディザイア。直接的な勾玉からの力をぶつけないと、倒せないのだろう。雷撃と火こそ勾玉の力だが、爆発の衝撃は、間接的なものだ。多少、ダメージになっているようだが、それでも、健在だった。
「もう、だめッス……」
 絶望しきったような、紫雲英の呟きが聞こえた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 3774