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作品名:アヤカシ同盟外伝 朔羅・ファーストミッション 作者:ジン 竜珠

最終回 4
 ボロ切れのように宙を舞い、地に墜落したとき、朔羅は、異常な痛みに気づいた。
 右の脇腹の服が裂け、血が流れだしている。
 にじんでいる、というのではない。あふれる、とまではいかないが、明らかに、流血している。
 痛みと、己のうぬぼれで危機に陥ったことで、涙がにじむ。だが、倒さねば、自分が殺される。
 そう思って立ち上がろうとしたとき、背後から強烈な衝撃があって、朔羅は宙を舞った。
 体が、まるで制御下にない。かろうじて剣は手に持っているが、それ以外は、全く自分の体ではないかのようだ。
 地で何度かバウンドする。今度は、腰から背中に熱く、激痛が走っている。どのようになっているか、確認しようにも、腕が動かせない。それでも、どうにか、起き上がり、片膝を突く。
 なんとかしなければ。
 そう思い、朔羅は羆の呪符を出し呪文を唱えた。
 それをフウキめがけて投げると、呪符に気が集まり、一体の妖怪になった。クマに似た姿をしている。
 羆が雄叫びを上げ、フウキに向かう。忠士の説明では、羆自体、強力な妖怪ではあるが、このような、ある種「パッケージされた」状態では、使用する術者の呪力のレベルに応じて、羆の力のレベルも変わるという。
 となると、どれだけ時間が稼げるか。
 この隙に、朔羅は剣の柄頭を組み合わせ、弓状にする。そして、咒を唱えた。
「鳴弦(めいげん)。神通神妙神力。謹請。弓霊大神(きゅうれいたいしん)。この霊弓(れいきゅう)に神威降りませ」
 痛みで、集中が乱れそうになるが、歯を食いしばり、光の弦と矢を現出させる。
 そして、咒を唱える。
「弓矢立つ、ここも高天(たかま)の、原なれば、射る矢の先に、悪魔たまらじ」
 めまいがして、照準が狂いそうになるが、なんとか意識を保ち、フウキを狙う。これで倒せなければ、今の自分ではフウキを倒せない。つまり、ここで死ぬということ。
 そして、気合いもろとも、矢を放つ。フウキの突進で消滅した羆が、消滅するのと同時に、光の矢が、フウキの額を貫く。
 一瞬、フウキの動きが止まったが。
 フウキがゆっくりとこちらにこうべを巡らせる。
 通用しなかったか。
 どうやら、ここまでらしい。
 まだまだ、やりたいことがたくさん残っていたのに。
 そう思うと、悔しさや無念や、様々な念が全身の神経を駆け巡る。
 観念したとき。
 フウキが形容しがたい、耳障りな声を上げて、爆発した。
 その風に乗って、一枚の金属板が転がってくる。
 フウキ召喚の呪符だった。

 闘いの消耗で、しばらく横になっていると、美伽がやってきた。そして、麓の病院へかつぎ込まれ、手当を受けた。
 幸い、右腹部の傷も、背中の傷も、それほど重傷ではなかったが、それでも、二日ほど、安静にしていなければならなかった。
「今回のことは、よい薬であったのう」
 この言葉から察するに、祖父は朔羅の増上慢(ぞうじょうまん)を見抜いていたらしい。
 精進せねば。
 朔羅が決意を固める、一件であった。


(アヤカシ同盟外伝 朔羅・ファーストミッション・了)


あとがき

 真空斬りの咒です。
「はやて。つぶて。かぜきりのなのはのち(疾風。飛礫。風切りの刃の葉の霊……「な」とは古い言葉で「刃」のことです。それゆえ、片方に刃がある武器を「片刃(カタ・ナ)」といいます)」


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