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作品名:アヤカシ同盟外伝 朔羅・ファーストミッション 作者:ジン 竜珠

第2回 2
 その視線の意味に気づいたか、そうでないのかわからないが、苦笑すると、忠士は言った。
「君に退治てもらいたい存在がいる。……フウキという妖怪だ」
「妖怪、ですか?」
 頷き、忠士は美伽に資料一式を持って来させた。
「我々のやろうとしていることは、知っているね?」
 これについては、祖父や、亡父、母から聞かされてきている。頷いて、朔羅は言った。
「自然界の象徴である、妖怪たちを異界へ追いやってしまったために、人類社会は自然とのバランスを失い、滅びに向かっている。それを救うために、妖怪たちをこちらに呼び戻す」
「そう。そのために我々は術を研究し、改良し、いくつか実際に妖怪をこちらに呼び戻すことに成功している」
 驚いた。実際に妖怪の召喚に成功しているのなら、理想実現も近いかも知れない。
 歓喜にも似た感情がわいたのもつかの間、忠士は、溜息をついた。
「だけれどね、ちょっと失敗例もあるんだ」
「失敗例?」
 聞き捨てならない。理想世界を作るために妖怪を喚び出したのに、それに「失敗例」があるなど、許されないことだ。
 朔羅の言葉の意味を知ったのか、忠士がシニカルな笑みを浮かべる。
「まだまだ、研究途上だ。いくつかの失敗はやむを得んさ。その失敗例……フウキだが、制御できなくなってしまった。今はまだ、結界の中に閉じ込めてあるが、時間が経つと、そこから逃げ出す怖れがある。そうなると、いろいろと問題がある。……わかるね?」
 朔羅は頷いた。
「今はまだ、デリケートな時期だ。我々の存在は、表、裏、ともに知られるわけにはいかない」
 まさにその通り。いつの世も、革新的な存在は、初めは迫害の対象となっている。中学三年生の朔羅も、そのぐらいは理解できる。
「資料に目を通しておいてくれ。それから」
 と、忠士は、資料から、二枚の金属製の板を出した。いずれも、紙幣サイズで、一枚は銀色、もう一枚は金色だった。どちらにも、咒字や符形が、赤色でしるしてある。
 銀色の板を手に取り、忠士は言った。
「これは、フウキ召喚に使った呪符の『対符(ついふ)』だ。呪文を唱えて、この符を発動させれば、フウキの動きを、どの程度かはわからないが、弱らせることができるはず。それに」
 と、忠士は少し、なにかを考える素振りを見せてから言った。
「この辺りには、何らかの力が働いていてね。フウキも本来の力は発揮できていないらしい」
 何らかの力。いわゆる「自然の中にある力」だろうか?
 そして、忠士は金色の札を取る。
「この符には、羆(ヒ)という妖怪が封じてある。これは、制御可能なものだ。呪文を教えておく。君の手足となり、助けとなるだろう」
 二枚の金属板を受け取ったとき、シャワールームから、一人の少女が出てきた。
 ハッとなるほどの美少女だ。自分とたいして年は変わらないようだ。感覚的に、何らかの「禊」をやっていたのがわかる。彼女のまとう「気」が、純化されていた。
 目が合ったが、朔羅が自分でもわかる「無表情」だったせいか、少女も、無表情で、ただ、こちらに会釈をするだけだった。
「お兄様」
 と、少女が言った。
「これから、セフォナと一緒に、『下見』をして参ります」
「そうか」
 お辞儀をして、少女が部屋を出る。
 それを目で追っていると、忠士が言った。
「妹の妃女(ひめ)だ。この街で『ある儀式』が行えそうなんで、その下見に連れてきた」
「そうですか」
 何の儀式か、ちょっとばかり興味はあるが、今回のことには無関係だろう。
 いくつか注意を聞いて、資料を手に、朔羅も美伽とともに、部屋を出た。


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