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作品名:アヤカシ同盟外伝 朔羅・ファーストミッション 作者:ジン 竜珠

第1回
 中学三年生の冬。
 満向朔羅(みつさき さくら)がやってきたのは、西隣の県にある将礼門(しょうれいもん)市というところだ。朔羅が住んでいるところは、県の中央部、将礼門市は隣県のほぼ西に位置するため、電車を使うと、二時間ほどかかる。
 新幹線を使うことも考えたが、将礼門市の近くには新幹線のターミナル駅がなく、乗り換え等を考えると、結局、同じだけの時間がかかる。ならば、乗り換え等の煩雑な手間を省く意味でも、在来線を利用した方がいい。それで、朔羅は新幹線ではなく、在来線を利用することにした。新幹線を利用するより、安価だったこともある。
 朝、八時の電車に乗ったので、着いたのは、十時を十五分ほど過ぎた頃だ。
 駅には、阿木公美伽(あきく みか)という、天戒冥傳(てんかいメイデン)の所従(しょじゅう)である、若い女が迎えに来ていた。
 随分と背が高い。そう思いながら見上げていると、美伽が言った。
「今日は平日ですね。わざわざ学校をお休みにしてまで来てもらって、ごめんなさい」
 年下の自分にも敬語を使うなど、随分と腰の低い女だと思った。満向家は、地鳴(つちなり)家という、古神道の一派を伝える家に師事している。地鳴家自体、地下に潜っているため、実態がよくわからない。祖父の話では、満向家は、戦後すぐから、地鳴家に師事しているという。ただ、厳密に言うと、地鳴家は天音明道(あまねみょうどう)という、やはり古神道の一派を伝える家に師事していたが、戦後、何らかの理由で袂を分かったらしい。だから、天音の一分派という位置づけになるそうだ。
 阿木公家も地鳴家に師事しているというが、この美伽という女は、今、実質的に地鳴の「顔」として動いている地鳴忠士(つちなり ただし)の右腕らしい。確かに、自分よりも高い呪力を持っているのがわかる。だが、それは、純粋に呪術としてのものであって、朔羅とは、ベクトルが違うのもわかる。だから、単純に美伽の方が格が上、とは、朔羅は考えない。
 忠士が逗留しているという、ホテルの一室に案内されると、そこにスーツ姿の若い男がいた。
 地鳴忠士。頻繁に会うような間柄ではないが、それでも、朔羅はこの男から、妙な「意識」を感じ取っていた。
 たとえるなら、なにかの観念に囚われている、といった感じだろうか?
「すまないね、満向さん」
 笑顔を浮かべているが、その笑顔も、どこかそらぞらしい。なんとなくだが、この男、朔羅のことを「道具」程度にしか、思っていないように、感じる。
「電話でも伝えたように、君の腕を借りたい。君は、御尊父から退魔の技を教わり、それを磨いているとか?」
「父は、昨年、病にて身罷(みまか)りましたので、今は、祖父が師となっております」
 美伽が出したミルクコーヒーを一口、飲み下して、朔羅は答える。どうやら、コーヒーメーカー等、一式、持参したらしい。
「そうだったね。君の腕のほどは、聞いている。邪気の塊程度なら、朝飯前で、退魔できるそうだね?」
「はい。小物の妖魔でしたら、簡単なことです」
 幾分、誇張はあったが、なめられたら、しまいだ。それに、本当に小物の邪気程度なら、これまでも、何体も葬ってきている。
「そうか」
 と、忠士は、値踏みするように、朔羅を見る。その目は、朔羅の、呪力の力量を推し量ろうとしているもののようだが、年頃の少女の身としては、つい、別の意味の視線ではないかと勘ぐってしまい、思わず、睨んでしまった。


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