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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK Y 作者:ジン 竜珠

第6回 6
 天野光奈の実家は、将番礼の西側のエリア、甲部(こうべ)にある雑貨屋だ。ここ、甲部は、昔「武将の甲冑を作っていた職工たちが、工房を構えていた」といわれており、その関係か、様々な職人の店が集まっている。
 火曜日の朝、正午過ぎ、光奈が店番をしていると、一人の人物が店の前を通るのが見えた。知り合いだった。店の前の自動販売機で何か飲み物を買っているような気配があったので、外へ出て、挨拶しておくことにした。
「よう、高城(たかぎ)くん」
 光奈がそう言うと、相手がコインを挿入しながら、こちらを見た。
「ああ、天野先輩。……そうか、ここって、先輩の実家でしたよね」
 長身で、筋骨たくましい青年。光奈の高校時代の後輩で、高城雨彦(たかぎ あめひこ)という。現在、新将岳署で、刑事課強行犯係の刑事をやっている。
「仕事中って、感じだね?」
「ええ、まあ。聞き込みの最中で」
 自動販売機から缶コーヒーを取りだし、プルトップを開けると、高城は、一口、飲む。
「先輩だから、ちょっとだけ話しますけど」
 と、高城は話し始めた。
「昨夜、コロシがありましてね。黒毛(こくもう)なんですけど」
 黒毛というのは、甲部の西南に位置するエリアで、主に住宅地である。
「一応、容疑者がいることはいるんですが、アリバイがあるんですよ」
「へえ」
 光奈も自動販売機で、アップルジュースを買う。
「鉄壁のアリバイってやつかい?」
 その問いに、何度も高城が頷く。
「犯行時刻に、ある人物の……吉備州の方にある人物の部屋にいたことが確認されたんです。そこから、現場(げんじょう)であるマンションへは、車で行っても一時間程度はかかりますし、今、聞き込んだ限りですが、犯行時刻の前後、その人物を目撃した人はいないんです。ていうか、どういうわけか、周辺に目撃者そのものがいなくて」
 光奈は、強い霊感を持っており、そのことは高城も知っている。というより、光奈の霊感の強さは、高校時代、学校で有名だった。
 もちろん、「霊感で犯人を捜す」などということは有り得ないし、仮にそんなことができたとしても、裁判所で証拠として採用されることなど、万に一つもない。
 だが、高城としては、なんとなく「ヒントでも、もらえれば」ぐらいの気持ちがあるのかも知れない。なので、光奈は、もう少し、突っ込んだ話を聞くことにした。
「どういう事件なんだ?」
 高城は少々、考えるそぶりを見せて、話し始めた。
「亡くなったのは、筒美美弥子(つつみ みやこ)っていう、三十九歳の女性。昨夜の午後九時までは、生きてることが確認されてる。前、勤めてたクラブの、同僚だった女性とお喋りしてます。御遺体が発見されたのが、昨夜の十時十五分頃。たまたま遠方の街から遊びに来ていた妹が、外出から帰って来て、玄関の鍵が開いていて、中に入って、美弥子が亡くなっているところを発見したんです。御遺体の硬直の状況から見て、亡くなったのは、昨夜の午後九時半から十一時半の間。妹が帰ってきたのが午後十時十五分頃ですから、九時半から十時十五分頃の間。さらに妹はそこから動いていないそうですから、犯人が御遺体発見後に逃走したことは考えられない。だから、午後十時十五分よりも、もっと前に犯人は逃走していた。で、さっきも言いましたが、一応、容疑者、ていうか、美弥子に恨みを持つ人物がいるんですが」
 と、高城は頭をかく。まるで「ここまで話していいのか」と、後悔しているようだったが、話すことにしたようだ。
「その人物、午後九時半頃に、ある人物の部屋にいるのが確認されてるんです」
 光奈は、素人考えだろうと思いながら、口を挟んだ。
「その『ある人物』ってのが、共犯者って可能性は?」
「それも考えてますが、ちょっと難しいんですよ」
「難しい?」
 ちょっとわからない表現だ。
「その『ある人物』、午後九時半頃から、八分間、ライブ映像を発信しているんですが、そこに、その人物が映ってしまってるんです。それを見た、『ある人物』の友人が、『ある人物』の携帯に電話しているんですよ。そして、その電話に出るところも、映し出されてる」
 光奈は簡単に整理してみた。
 その人物が、九時半頃にライブ映像に映り込んでいる。そこからすぐに現場のマンションに行ったとしても、一時間はかかる。なので、現場到着は早くても午後十時半頃。そして殺人を行い、すぐに逃走した。しかし、御遺体が発見されたのは、十時十五分。
 時間の計算が合わない。
「他に犯人、いるんじゃないのか?」
 普通に考えれば、そうだろう。
 高城も頷いている。
 その時、女性刑事がやってきた。高城の後輩で上結美緒(かみむすび みお)だ。
「高城さん、車、回しておきました」
「おう」
 と答え、高城は光奈に一礼した。そして、
「もし、なんか『閃い』たら、連絡ください」
 と言い残し、去って行った。


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