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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK Y 作者:ジン 竜珠

第3回 漆・三
 午後六時半。
 正門を出たところで、あたしに声をかけてきた人がいる。
 響国琉衣(きょうごく るい)さんだった。
「どうしたの、響国さん?」
 彼女とあたしは、そんなに、ていうか、まったく親しくない。同じ「域外入学」ではあるけど、クラスも部活も違うし、そもそも「住んでる世界」が違うし。
「ねえ、よかったら、ちょっとつきあってくださらないかしら? いろいろと、お話ししたいこともありますし」
 彼女からは、この間「お料理のコーチをして欲しい」みたいなことを言われた。あたし、断ったのよね。だって、今、ただでさえ、ややこしいことになってるし、そもそもあたし、人に何かを教えられるほどの腕前じゃないし。
 たぶん、その関係の話なんだろうなあ。でも、ここで断ると角が立ちそうだし、どうしよう?
「ねえ、近くの児童公園で、お話ししましょ?」
 学校から、三分ぐらい歩いたところに、児童公園がある。今の時間でも、結構、人の姿を見かけるから、そこでお喋りするってことは、込み入った話じゃないか。
 あたしは、頷いて、彼女について行った。

 行った先の公園は、なぜか、無人。
 どういうこと? ここって、今の時間でも、たいてい、誰かがいるの、ちょくちょく見てるわよ?
 ていうか、ここを突っ切ると、バス停とかがあるんで、サラリーマンさんとかOLさんとか、よく見かけるんだけど? 自動販売機も置いてあるし。
 あたしがそんな風に思ってると、響国さんがベンチに座った。あたしも一緒のベンチに腰掛ける。
 きっと「お料理のコーチの話」なんだろうなあ、と思ってたんだけど、なかなか話が始まらない。っていうか、ここへ来るまで、あたしたち、まったく無言だったのよね。
 話しづらいのか、響国さん、たまに、こっちを見てはうつむく。
 なんだろ?
 お料理の手ほどきのお願い、ってそんなに、覚悟のいることかしら?
「ねえ、響国さん、お話って?」
 仕方ないから、あたしの方から水を向ける。
「え? あ、あの、その……」
 なぁんか、歯切れが悪い。本当に、なんのお話だろ?
 そう思っていたら、ケータイが鳴った。
「ごめんなさい、響国さん、出てもいい?」
 彼女が頷いたのを確認して、あたしはポケットからケータイを出す。タマちゃんからだった。
 通話ボタンをタップする。
『綺たん! 妖怪の反応があるニャ!』
「……ああ、クラスメイトの丹安武さん。どうしたの?」
『うぇ? どうしたニャ、他人行儀なのニャ?』
「ごめんなさい、丹安武さん、落ち着いて話してくれる?」
『だから、妖怪の反応が、あるニャ! 環緒姉(たまおねえ)が探知して、連絡くれて、今、向かってるニャ! これから、綺たんを迎えに行くから、場所を……』
「ちょ、ちょっと落ち着いてくれるかな、クラスメイトの『丹安武』さん?」
 ここで、ようやくタマちゃんも気づいたらしい、あたしの近くに第三者がいるってことに。
 電話口で咳払いらしいものをする気配があって、タマちゃんが深呼吸してから続けた。
『大岳の方で妖怪が出たニャ! 種類はわからないけど天音家と契約してないヤツなんだニャ! 何か悪さする前に手を打つニャ! 綺たんにも手を貸して欲しいニャ! タダシとヒメはお仕事で留守ニャ!』
 全然、落ち着いてなかった。
「だからね、『丹安武』さん? 今、あたしお友達と……」
 そこまで言ったところで、いきなり響国さんがあたしのケータイを取り上げ、通話を切っちゃった。


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