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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK Y 作者:ジン 竜珠

第1回 第漆章 君、恋うる華の乙女 後篇
 ここは、大岳にある、忠士が本拠にしている家だ。
 結界で周囲と仕切っているため、ここへやってくる者はいない。それだけでなく、妖怪「奔雲(ほんうん)」の力で雲を発生させて、視界を塞ぎ、さらに妖怪「シンタイ」の力で、近づく人間の意識を、軽く攪乱させているので、ここへ来られる人間は、まずいない。
 例えるなら、空間が歪んでいるような状態になっているので、例えば、その場所をよけて移動しても、本人には、「よけた」という自覚はない。ただ、GPSといった電子機器や、丁寧に「この位置から見えるもの」「あの位置から見えるもの」などの測定値などをつきあわせれば、「なぜか認知できない領域」があるのが知れるが、だからといって、ここへたどり着くことはできない。
 来られるとしたら、優れた術士か、「通行証」となる呪符を持つ者だけだ。
 だから、月曜日の朝、ここにやってきた見知らぬ青年は、かなりの術士ということになる。
 西洋人のような顔立ちだか、どこか、東洋風でもある。ハーフといったところだろうか。
 庭先で、警戒をとかず、忠士は言った。
「ここに来られたということは、それなりの腕を持っているとお見受けする。単刀直入に伺おう。貴殿がここに来られた目的はなんだ?」
 自分より二つか三つ程度、年下のようだから、二十五、六歳だろうか。この若さで、この結界内に踏み込んでこられるということは、かなりの腕と見た方がいい。万が一、一戦交えることになるようなことを考え、忠士は妖怪召喚の呪符を、いつでも発動できるよう、さりげなく印綬を用意する。
 男は、軽く会釈し、上着のポケットから、通行証の呪符を出す。これを持つということは、誰かから譲渡されたか、借り受けたか。あるいは。
 倒して奪ったか。
 目つきが険しくなるのがわかる。
 それを見たのだろう、男が、肩をすくめた。
「あなたの御母堂(ごぼどう)……ディミター地鳴さんから、お話は、お聞き及びのことと思うのですが」
 その言葉に、幾分、警戒を緩め、忠士は言った。
「あなたが……。義母(はは)から、お話は伺っています。『アクス=マティコイ』とかいう、結社の方ですね?」
 男が、頷く。
「エレウシス、と申します。正確には、今回、私は個人的に動いているので、結社は無関係とお考えください」
 いろいろと事情があるらしい。義母からは、「海外の結社から、自分たちの賛同者がやってくるので、協力して事に当たれ」といった内容の話を聞かされている。
「ご挨拶代わり、といってはアレですが」
 と、エレウシスは上着の内ポケットから二枚の布きれを出す。十センチ角程度だろうか、魔法円のようなものが書いてある。
「現在、『使用中』の使い魔が、使用不能になっていると、お見受けします。同じ性質の妖魔です。お使いください」
 どうやら、因呪が破壊されて、しばらく召喚不可能になってしまった緑郎、因呪が部分的に破壊されて、修復中の紅娘の代わりになるような、妖魔のようだ。


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