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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK X 作者:ジン 竜珠

第9回 9
 あたしは、おずおずと聞いた。
「その傷……」
 そう、光奈さんの背中には、まるで大きなバッテンを描いたような、傷跡があったのだ。
 パッと見だからわからないけど、刃物というより、何か大きな動物の……例えば、クマとか、そんな感じの巨大な怪物の爪でつけられた傷っぽい。
「去年の秋に、ちょっとあってね」
「去年の秋?」
 ボディーソープを、大胆に直接、身体に塗り(やっぱり、スポンジでつけた方がいいと思う)、光奈さんが言った。
「去年、ちょっとした用事で、糺と緋芽と佗磨姫と、四人で志火島市に行ったときなんだがな。まあ、いろいろとあって、さく……」
 そこまで言って、光奈さんは、咳払いをしてから、言い直した。
「ある人物が逃げる際に、置き土産代わりに、羆(ヒ)……っていっても、この間の牛とは、違うヤツだが、その妖怪を封じた呪符を、発動させていきやがってな。こいつが強ェのなんの。そん時に受けた、名誉の勲章さ。……あ、ちゃんと羆は倒したぜ、念のため」
 と、笑う。なんていうか、豪快な人だなあ、この人。
「……綺」
 と、光奈さんが、柔らかい笑みで、あたしを見た。
「いろいろと、悩んでるみたいだな」
「うん。なんていうか、あたしのキャパ、超えてるみたい」
 と、あたしは、思うところを話した。この人になら、ちゃんと受け止めてもらえる、そんな風に思えたから。
「自然を破壊する人間であるあたしが、妖怪の力を借りるなんて、そんなことできるのかなあ……」
 あたしが何をしないといけないのか、まだ教えてもらってないけど、今のところ、妖怪の力を借りて「何か」をするんだろうなあってことはわかる。
 でも、人間に、あからさまに敵意を持つ妖怪もいる。あたしに、何ができるんだろう?
 一通り、話を聞いてくれた光奈さんは、立ち上がり、ニカッてした。なんだろう、と思っていたら、いきなりあたしの頭を押さえ、湯船にあたしを沈めた。
 熱い熱い熱い熱い!
 頭の上から、手がどくのと同時に、あたしはお湯から頭を出した。
「何すんですか!?」
 あたしの抗議を聞き、光奈さんは笑って言った。
「悩め悩め、青少年! しっかり悩め、華の乙女! 悩んで悩んで、そうやって掴み取った答が、君の『軸』になる! だから」
 と、光奈さんは、またあたしの頭に手を置き、お湯の中に沈め込んだ。
 うわぷぷぷぷぷ! 熱いって!
 手がどいて、お湯から顔を出すと、中腰になって、あたしと目線を合わせる位置に、光奈さんの顔があった。
「中途半端に、答を決めるな。もし間違ってると思ったら、また、考えろ。その繰り返しで、君は素敵な大人になるんだから」
 とても優しい笑みを浮かべてた。


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