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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK X 作者:ジン 竜珠

第8回 陸・八
 糺さんと緋芽さんは、午前中に仕事で出かけたそうで、今夜は泊まりがけになるという。
 時刻はそろそろ午後六時二十分。
 厨房では、お夕飯の支度の真っ最中だ。
 あたしは、なんだか、重苦しい気持ちだった。それは、林の中であの声に言われた「人間に、自然は味方しない」っていう言葉と、木霊に言われた「人間を認めない」っていう言葉が尾を引いているから。
 それと、もう一つ。朔羅が意識を失って、帰って来たんだ。で、今、朔羅は居間と同じぐらいある、広い部屋に寝かされてる。
 詳しいことはまだ聞いてないけど、妖怪と闘っていて、そんな状態になったらしい。環緒さんが抱えて、妖力を使って帰ってこようとしたけど、朔羅を抱えると「身体の力が抜けて、重く感じてしまう」とかで、光奈さんに連絡を取って、来てもらったらしい。光奈さんは、今日はお仕事があったということで、それが終わってから、迎えに行って、ここに担ぎ込まれてきた。
 光奈さんと環緒さん、タマちゃんが、居間に戻ってきた。
「どうなの、朔羅は……?」
 あたしの声に乗っていた感情を感じ取ったのか、光奈さんが、少しだけ弱い笑みを浮かべて言った。
「あいつも、術士だ。あとは、あいつの精神力次第だな」
 なんか、諦めてるようにも見えるけど? そんな気持ちで光奈さんを見ると、光奈さんが溜息をついて言った。
「あいつ、『何か』に絡め取られちまってる。今のオレじゃあ、それを引きはがすことができねえ。あいつ自身が闘って、自分で『それ』を引きはがすしかない」
 環緒さんも頷く。
「ワタシにも、彼女に絡みついているものを剥がす能力はない」
「あっしにもないニャ」
 結局、朔羅自身の戦い、ということか。
 あたしにも、なにもできないな、それじゃあ。

 午後九時二十分。あたしはタマちゃんと一緒にお風呂に入っていた。
 お互い、言葉少なで。
 なんか、お喋りするような気分じゃないし。
 あたしは湯船に浸かって、タマちゃんは洗い場で、身体を洗っているときだった。入り口が開いて、光奈さんが入ってきた。
「よう、邪魔するよ!」
 いつものように、ニカって笑う。
 気分の切り替えがすぐにできる人がうらやましい。
 光奈さんって、服の上からじゃ、よくわからなかったけど、結構プロポーションいいのね。
 あたしが見ほれていると、光奈さんが頭をかきながら言った。
「そんなに見るなよ」
 照れてる。いつも余裕たっぷりに見えるから、なんだか新鮮な感じがするなあ。
 光奈さんが、タマちゃんの隣で、身体を洗い始める。その時、彼女の背中が見えた。
「あ……」
 思わず声に出して、あたしは慌てて口を両手で塞ぐ。でも、光奈さんは気がついたみたい。あたしの方を向いた。
「ビックリしたろ?」
「え? ええ、と。その……」
「気にすんな、気にすんな」
 と、光奈さんは笑った。


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