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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK X 作者:ジン 竜珠

第5回 5
 馬腹に剣を振り下ろしたものの、やはり跳躍というワンアクションが入った分、相手に動きと着地点が読まれてしまったのだろう、馬腹がその刃を避けるように、横っ飛びに飛ぶ。人間相手なら、間違いなく刃を食い込ませることができたのに、と思いながら逃げた先を目で追ったとき、すぐ傍で何かがぶつかり合う音がした。横目で見ると、環緒が、緑色の服を着た少年に跳び蹴りを食わせて、弾き飛ばすところだった。
 どうやら、別の妖怪がいて、朔羅を狙っていたらしい。それを環緒が弾いたようだ。それに内心、感謝しつつ、朔羅は馬腹を追う。すぐに視認できたものの、林の中。木が林立するという、このような状況では、自分の得物である長剣は、不利だ。だが、それでもその木を利用して、狭小ポイントにでも追い込めれば剣を突き刺すチャンスもあるだろう。
 そう思ったとき、馬腹がジャンプし、近くの木を蹴って、方向転換した。さらに、跳んだ先での木を蹴って、また方向転換する。次なる木を蹴ったときも、跳んだ角度から見て、また違う木を蹴るのだろうと思った。だが、その方向に、ある木の枝が垂れ下がっているのに気づいたとき、朔羅は、ほぼ直感的に、身をひねっていた。
 馬腹が垂れ下がった枝に前脚を引っかけ、それを支点にして身体を回転させ、朔羅がいた位置に着弾する。
 普通なら、垂れ下がっている枝に体重をかけても方向転換などできないが、何らかの妖力か、あるいはあの妖怪は体重というものを持たないのか。
 そんな詮索はどうでもいい。糺や緋芽から「新将岳市、その将番礼エリアを中心とした、半径百八十キロ程度の範囲には、ある種の『咒力』が働いているので、天戒冥傳の操る妖怪たちは、その真価を発揮できない」と聞かされている。だから、伝説上、高位の道士でなければ倒せないような存在でも、容易に倒せるはず。理論的には、実体化した妖怪は、ある程度「物理法則」に支配されるはずなのだ。
 こちらのアドバンテージは大きい。
 朔羅はまだ、十分に「咒闘」できるレベルにないのだ。だから、ハイレベルの、大きい技や咒力を使うためには、やはり「溜め」や神呪(かじり)を唱える必要がある。それだけの時間を稼ぐ必要があるのだ。
 妖怪が真価を発揮できず、物理的にダメージを与えうるのであれば、それだけの時間を稼ぐことができる。
 朔羅は、木の陰に隠れつつ、馬腹の動きを探る。馬腹は木々の間を縫うようにして、朔羅の周囲を、円を描くように移動し、こちらを翻弄している。どこから攻めてくるつもりか、容易に読むことができない。
 ならば。
 朔羅は、さほど集中を必要としない咒技を使った。
 剣で、地面に、ある字を書く。それは神代文字(じんだいもじ)で「水」の意味を持つ咒字だった。そして神呪を唱える。
「天地(あめつち)の 水の産霊(むすび)に 化生(なり)ませる 水の神々 感(かま)けて通ふ」
 そして、気合いとともに、力強く言葉を発する。
「前(まえ)!」
 すると、それまで周囲を駆け巡っていた馬腹が、朔羅の前方に止まり、こちらに向かってくる。まるで、地面の下に水の流れがあり、それに沿って走ってくるかのようだ。術が成功したことを確信し、朔羅もダッシュした。そして、気合いとともに、剣を振り下ろす。
 直前になって、馬腹も術に落ちたことを悟ったらしい。だが、急には止まれず、かわそうとする体勢で朔羅の一撃を受けた。
 朔羅の剣を横腹に受け、馬腹は跳びすさる。だが、そこに留まっていては斬られると思ったか、そこからさらに後方へと跳躍した。
 だが、咄嗟のことで、よく確認していなかったらしい。跳躍した先で、いかなる状況だったのか、上空から緑色の服を着た少年が落ちてきた。両者はまさかの事態に狼狽し、なすすべもなく衝突する。重なり合ったところへ、朔羅の剣と、環緒の手から伸びた、「氣」による霊刃(れいじん)が、襲いかかった!


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