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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK X 作者:ジン 竜珠

第2回 2
「あいつらの行く手をさえぎると、死の呪いが降りかかるニャ……」
「死……って、ちょっと待ってよう!」
 もう、この間から「病気の呪い」だの「一族郎党呪い殺す」だの、そんなのばっか!
「本当に死ぬことはないニャ。でも、意識不明の重体になるのは、確実ニャ」
 冗談じゃないわよ!
 タマちゃんが、再び、空に向かって、叫んだ。
「ドライアド! こんなイタズラは、よくないニャ! あんたたちは、軽い気持ちだろけど、たいへんなことになるのニャ!」
 タマちゃんが説得してるけど、聞こえてくるのは邪気のない笑い声だけ。
 いや、それに混じって、若い男の声も聞こえてきた。
『森を破壊し、地球の調和を乱す貴様らが、自然の加護を得られるとでも思ったか!』
 嘲笑混じりだった。いつか「フンババ」って叫んだ声と、似てる気がする。
 その言葉が、あたしの胸に槍のような、鋭い何かを打つ。確かに、あたしたちは、「開発」の名のもとに自然環境を破壊してる。あたしの実家の近くの山道を拡張して、広い道路が通るって話があったとき、林とかを大きく切り拓くっていうことだった。その時は、「治水能力がどうの、山崩れの危険がこうの」っていう理由で反対運動があったらしいけど、「自然保護」っていう反対運動もあった。その頃、あたし、まだ小学校高学年だったから、詳しいことは知らないけど、結局、利便性とか、いろんな理由が優先されて、で、「拡幅工事」とかいうのが行われて、今は広くて立派な道ができてる。
 そのかわり、そこの自然はなくなって、今年の春休みに帰ったときには、その道沿いにラーメン屋さんか何かの建物が、建設されてる途中だった。
 結局、人間は、便利な生活のために自然を破壊してる。そんな人間に、ドライアドとか、自然を象徴する存在が手を貸してくれるわけないよね。
 ブルーが入ってるあたしの耳に、タマちゃんの声が届いた。
「綺たん、惑わされては、駄目ニャ! 確かに、人間は、これまで自然破壊をしたかも知れないけど、そうやって、文明を築いたからこそ、『人間』、『人』として存在できるのニャ! 色んな考えに接して、色んな『世界』を見て、理性を育てて、よりよい方向へと向かうことができるのニャ! そのために、タダシとヒメが頑張って、あっしらも、頑張ってるニャ! 文明否定は、単なる思考停止ニャ! 誰か知らないけど、そんな似非エコロジストの言葉なんか、無視するニャ!」
 ……。
 そうね。そういうものかも知れない。あたしだって、いきなり文明捨てて、穴居生活しろっていわれたって、できるわけないし、世界中で、環境問題に取り組んでるし。
 現実問題として、もう文明社会が出来上がってしまっている以上、今、立っている「ここ」から、歩き出さないとならない。まさに、「自然との共生」を目指さないとならない。
 しかし。
「タマちゃん、難しいこと、知ってるね?」
 下宿先での様子からは、考えられない、哲学的思考だわ。あたしがそう言うと、タマちゃんが、バツが悪そうな表情になった。
「……うぃ。タダシから『お役を果たすために、心得ておきなさい』って、耳から眼鏡が生えそうなぐらい、聞かされたことのうちの一つニャ。はっきり言って、意味がよくわからないニャ。綺たん、文明があるから、理性が育つとか、って、どういう意味ニャ?」
 ……。
 こいつ、学校の成績はいいのよね。要するに、暗記物に強いだけってことか。
 まあ、猫だし。
「それは、帰ってから、話してあげるから、今は、この状況をなんとかしないと!」
 あたしの言葉に、タマちゃんが頷いて、大きく息を吸い込む。そして、目を閉じて、意識を集中し始めたとき、また「声」がした。
『ドライアドは、ただ「遊んでいる」だけなのだ。そんな存在を、焼くつもりか、猫股?』
 焼く? そうか、タマちゃん、火が使えるんだ。でも、男の声で、タマちゃんが、眉を曇らせた。「遊んでいるだけ」。それじゃあ、あたしだって、手が出せないかも知れない。
 でも、着実に、ヒィシは近づいてきてる。どうしよう!?


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