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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK X 作者:ジン 竜珠

第1回 第陸章 君、恋うる華の乙女 中篇
 あくまであたしの感覚だけど。
 あの「ヒィシ」ってやつ、かなりヤバい気がする。それは、タマちゃんが警戒しているから、とかいうんじゃない。
 あたし自身が感じるの、関わっちゃいけない妖怪だって!
「綺たん、ここから逃げるニャ! ヒィシは、フィンランドの精霊で、ヤバいヤツだニャ!」
 言われるまでもない。あたしはタマちゃんと一緒に駆け出した。
 でも、さっきまであったはずの「道」がない! おまけに、なんだか、同じところをぐるぐる回っているような感じがして、気がつくと、ヒィシの近くに出てたりする。で、方向転換して走るんだけど、やっぱり、ヒィシが見える位置に出ちゃう。
「やめるニャ、オイン・エジェン!」
 タマちゃんが、それに向かって叫ぶ。
「なに、オイン・エジェン、って?」
「シベリアの森の精で、人を迷わせるヤツなんだニャ! 今、結界を張ってる張本人だニャ!」
 シベリアって、そんな遠くから、こんなところまで来てるの!?
「ねえ、タマちゃん、いつだったか、光奈さんが言ってたけど、日本でも、同じような妖怪がいるってこと? で、それが、邪魔してるってこと?」
 首を横に振り、タマちゃんは答える。
「オイン・エジェンそのものニャ! 誰かが、喚び出してるニャ!」
 よくわからない話ね、それ? じゃあ、ヒィシも、誰かが喚び出しているってことよね?
 ……誰が?
 そんな疑問を抱きながら、あたしたちは走るけど、まさに堂々巡り。どう移動しても、ヒィシの近くに出てしまう。
 どうしようと、思った瞬間。
 タマちゃんが、あたしの左側に移動した。まるで、何かから、あたしをかばうような動作に見えたけど。
 残念ながら、かばいきれなかった。
 あたしと、タマちゃん、蔓に上半身をからめとられちゃったもの。
 さっきは数本だったけど、今は、十本以上ある。力入れてみても、どうにもならない。立った姿勢から、一歩も動けない。
「ドライアド、引いて欲しいニャ!」
 タマちゃんが、空に向かって、叫ぶ。これはあたしも知ってる。ギリシア神話に出てくる、樹木の精だ。
 かすかに、何人かの女の子たちが、笑い合うような音が聞こえてきたような気がした。
「どうしよう、タマちゃん……」
 もう、不安いっぱいで、あたしは言った。ふと、前を見ると、ヒィシがこっちに向かって歩いてくる。十メートルぐらい先にいて、その歩みはゆっくりだけど、確実にこっちに向かってきていた。
「まずいニャ……」
 と、タマちゃんが深刻そうな声で言った。


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