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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK W 作者:ジン 竜珠

第9回 伍・九
 三つを仕掛け、残る四つ目。
 場所は、大岳の山の麓の、林の中。
「えっと、この先にハイキングコースへ繋がる、川沿いの道があって」
 と、あたしは地図と現地を照らしながら、歩いていた。
 ちなみに、タマちゃんは、この林の中に入ってから、なんだか、警戒モードに入ったみたいで、やたらと周囲を気にしてる。
 あたしは、目印となる「現在無人の民家」を捜した。地図によると、その民家の北の方に、川が流れてて、その川を上流の方へ辿っていくと、細い道があって、ハイキングコースへ繋がるはず。
「あ。あの家かな?」
 林を抜けて、ちょっと拓けたところに、一軒の二階建ての家がある。どういう経緯でこういうところに建っているのかわからないけど、大きい道だっただろうな、って感じの道があるから、昔はここには、街の方へ出る道があったり、もっと拓けたところだったんだろうなって思う。
 そういえば、あたしの実家の近くにも、こういうところがあったな。山道があって、その道沿いに、誰も住んでない家が建ってた。ホントに不便なところで、なんでこんなところに家があるんだろう、って思ったことがある。何年か前に、その近くに大きい道が通ることになって、家を取り壊す必要が出てきたけど、もともとの所有者が亡くなってて、相続した人がわからなくなってるから、市役所の人が困ってるって、ママが言ってた。
 あたしのママ、市役所の職員なのよね。
「じゃあ、この北に川があるのか」
 そう思って、家の裏手に回ろうとしたとき。
「危ないニャ!」
 タマちゃんが叫んで、あたしを抱えて、横飛びに飛んだ。そして、あたしが立ってたところに、何者かが着地……いや、着弾した。
 豪快に地面に転がったあたしは、タマちゃんに抱き起こされた。
「綺たん、大丈夫ニャ!?」
「う、うん。なんなの、なにがどうなったの?」
 起き上がると、もうもうと土煙が上がっている「そこ」にいたのは、赤いチャイナドレスを着た若い美女。髪が長くて、妖艶な笑みを浮かべてて、危険な感じがする。
「タマちゃん、あの女の人、何者?」
 多分、あの人がここに着弾したんだろう。どう見ても、普通の人間にできる芸当じゃない。
 タマちゃんは、首を横に振って言った。
「詳しいことは、あっしにもわからないニャ! でも」
 と、立ち上がり、女の人を睨む。
「あっしと同じ、もとは『猫』だニャ。でも、生まれ方が異常だニャ」
「異常?」
 生まれ方が異常、とか、意味がわからない。
 タマちゃんが、あたしを見る。猫耳出して。
「多分、アイツ、呪いをかけるか何かの目的のためだけに、殺されて、妖怪になったニャ!」
 え? なんかの目的のためだけに殺されて、妖怪になった?
 なにそれ? そんな理不尽なことって、あるの!?
 驚いてるあたしを放っておいて、女の人が言った。
『本来ノ、アタイノ役目デハナイガ、我ガ主(アルジ)ヲ護ラネバナラン。素直ニ帰ルナラ、見逃ス。同ジ猫ヲ出自トスル者同士、争イタクナイ』
「あっしは、猫股、あんたなんかと一緒にするニャ!」
『異ナ事ヲ言ウ。妖界(ようかい)ニテハ、同ジ猫ノアヤカシ。顕界ニテ「猫鬼(ビョウキ)」、「猫股(ねこまた)」ノ違イガ、アルダケデハナイカ』
「うるさいニャ!」
 そう言って、タマちゃんが女の人に躍りかかった。
 あたしは、というと。
 わけがわからない。前ほど、怖いっていう感情はないけど、それでも、事態にすぐに対応できない。
 どうしよう、と思っていたら、ブレスレットの御魂玉から「声」が届いた。
『娘、我の力を使うときが来た』
 すでに降りてきていた妖魂が、そんなことを言う。あたしは、ブレスレットから赤い御魂玉を出す。それを手にしたとき、タマちゃんの言葉が、脳裏に甦った。
「意志と身体の主導権は、五対五、下手をすると、アヤカシに意志と身体がアヤつられる怖れがある」
 ちょっと怖かったけど。
 闘ってるタマちゃんを見ていたら、こんな言葉も思い出した。

「絶対に、綺たんは、あっしが護るニャ!」

 次の瞬間、あたしは御魂玉をチョーカーのクリスタルに押し入れていた。


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