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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK W 作者:ジン 竜珠

第8回 伍・八
 禊場には、朔羅もいた。
 妖怪退治屋だもんね、修行してて当たり前か。
 水を被って、朔羅が祝詞を上げ始めた。
「たかまのはらに、かむづまります、すめみおやのかみ、いざなぎのみこと、もろかみ、みそぎのおおみときになりませるかみ、やそまがつひのかみ、おおまがつひのかみ……」
「あれ? タマちゃん、朔羅が唱えてるの、あたしが唱えてるのと違うけど?」
 ちょっとした疑問を口にすると、タマちゃんが頷いた。
「うぃ。あっちが本当の『身滌大祓』ニャ」
「え?」
 意味がわからないけど、「本当」とか? 祝詞に「本当」も「ウソ」もあるの?
「簡単に言うと、今、綺たんが奏上してるのは、誰が奏上しても、霊威を発する祝詞ニャ。朔羅が奏上してるのは、祓い清めの力がムチャクチャ強いけど、それなりのレベルじゃないと、その真価が発揮できないのニャ。かなり古い形らしいニャ。綺たんも、いずれ、あっちの祝詞を奏上してもらうことになるニャ」
 なんか、奥が深いんだなあ。

 朝食の席には、環緒さんもいた。この人、出かけてるときの方が多いよね?
 朝食後、糺さんが、あたし、朔羅、タマちゃん、環緒さんを前にして言った。
「今日は、皆さんに、ちょっとお願いしたいことがあります」
 そう言って、一度、環緒さんを見てから、言った。
「どうも、この市内で、妙な偏りがあります。八年ほど前、太歳が出現しました。場所は大岳の森の中。去年、コチョウという妖怪が出現しました。北西にある志火島市だったんですが、同じ山なので、大岳に繋がっています。この間、蜚が出現して四人に向かってもらいましたが、そこも大岳でした。なので」
 と、糺さんはもう一度、環緒さんを見る。
「環緒さんに、周辺の力場を調べてもらいました。そうしたら、どうしても『探知できない』、及び『視認できない』場所のあるのがわかったんです」
 どうしても探知できない? どういうこと?
 そんな疑問がわいた時、朔羅が答えてくれるように言った。
「なにかの呪術で、『ないことにされている場所』がある、ということですね?」
 頷き、糺さんが言った。
「おそらくそこが、連中のアジトです」
 朔羅の表情が険しくなる。
 なんだろ?
 もしかして、ラスボスがいる、最後のダンジョンとか?
「すみませんが、その場所を特定したいので、呪具を設置してきてもらえませんか?」
 そう言って、お手伝いさんを呼ぶ。若い女性(吉野さん、ていう人だ)が、三十センチ角、高さ十センチぐらいの桐箱みたいなものを二つ、重ねた物を持ってきた。
 糺さんが、それを床に置き、フタを取る。そこには、直径十センチぐらいの黒い半球が四つずつあった。その半球のてっぺんには、白い絵の具か何かで、記号みたいなものが縦に三つ、並んでる。一番上のヤツは、二重丸から、四本の線が左右の斜めに向けて延びてる。
「なんですか、これ?」
 あたしが言うと、横で、朔羅が言った。
「『氣・霊・散』ですね?」
 頷く糺さんが、あたしを見て言った。
「これを説明すると長くなるんで、簡単に。書いてあるのは、漢字の源流にあたる文字、みたいなものと思ってください。この呪具は、ある種の『エネルギー発振機能』を持ってますが、この文字それ自体にも『力』があります。これを設置することで、そこに仕掛けられた呪術の力が、散らされていって、やがて、ポイントが明らかになります」
 そして、糺さんは、地図のコピーをあたしたちに渡した。
「二手に分かれて、これを置いていってください。大丈夫、私有地は含まれてません。不法侵入にはなりませんよ」
 なんか、難しいこと言ってるけど、とりあえず、あたしとタマちゃん、環緒さんと朔羅が組むことになった。
 出がけに、糺さんが、タマちゃんに言った。
「佗磨姫さん、綺ちゃんをお願いしますね」
 その言葉に、タマちゃんが「うぃ!」と、元気よく答えた。


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