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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK W 作者:ジン 竜珠

第7回 7
 その夜、午後九時半。
 朔羅は「夜這いするな」って言ったけど、お喋りするぐらいならいいよね?
 ってわけで、お菓子とか持って朔羅の部屋に行こうとしたら、襖の前に緋芽さんがいた。あたしに声をかけようとしてたみたいで、ちょっとびっくりした表情をしてる。
 でも、気を取り直して、あたしに言った。
「綺ちゃん、お風呂、入れるわよ」
「……あの、前も聞きましたけど、なんで、あたしが一番風呂なんですか? それに、午後九時頃に入浴って、意味がわからないんですけど?」
 これについては、前、タマちゃんが言ってた。「温まった体が、冷めていくことで、人間は、快適な眠りにつける。八時から九時頃に入浴したら、十時頃に快眠につけて、朝四時半に起きて、修行ができる」。でも、なんか、これ以外にも理由があるみたい。タマちゃんは「そんな難しい話は、自分にはできない」みたいなこと言ってたけど。
 あたしが、そんなことを言うと、緋芽さんは、頷いて言った。
「うちでは、『和の姫』が頂点にくるの。これって、八卦でいうと『乾(けん)』になるのね? 『乾』って、時間に当てはめると、亥(い)の刻(こく)、今でいうと、午後九時から十一時頃になるの。だから、その時間帯に、綺ちゃんに入浴して欲しいのよ」
 なんか、難しい話だなあ。言っていることの「意味」の、半分どころか、全部が、わかんなかった。
「だからね? 今日は仕方ないけど、綺ちゃんには、家事をさせるわけにはいかないの」
 今日は、糺さんも、緋芽さんも、帰りが遅かったから、その隙に、あたしがお料理しちゃった。お手伝いさんたちも、なんだか、苦笑い浮かべてる人とか、あからさまに困ってる人とかいたなあ。
 ここの家って、思った以上に、いろんな「決まりごと」で、がんじがらめになってるみたい。

 人間の順応力って、恐ろしいわよね。
 ここに来て、一週間ぐらいだけど、なんか、朝、四時過ぎに起きられるようになってる。
 上半身を起こすと、なんか、変な感じがある。
 あたしは、ふと、御魂玉を入れてる方のブレスレットを見た。
 なんだろ?
 なんか、気配がある。なんていうか、すでに何かが降りてきてる感じ。
 なんだろうと、あたしが考えていると、襖が開いた。そこにいたのは、白い服を着たタマちゃんだ。猫耳出して、目が光ってる。
 まあ、ネコだし。
「ああ、綺たん。もう起きてたのかニャ」
 笑顔でそう言って、あたしに近づいたとき。
「ニャ!?」
 いきなり驚いて、あたしの手首を見た。
「……どうしたの?」
 あたしもちょっとビックリした。でも、あたしには構わず、タマちゃんは「ズザザーッ!」って感じで、あたしのそばに座り込み、ブレスレットを凝視する。そして。
「なんで、降りてきてるニャ!?」
 なんてことを言った。
 そうか、やっぱり、なんか降りてきてるのか。
 しばらくブレスレットを睨んでいたタマちゃんだけど、不意に厳しい表情になって言った。
「綺たんに、変なコトしたら、あっしがただじゃ置かないニャ!」
 えっと。
「ごめん、タマちゃん。何がどうなってるの? 御魂玉に妖怪が降りているのは、なんとなくわかるけど、それがどうかしたの?」
 困惑気味にそう言うと、タマちゃんが厳しい表情のまま、あたしに向いて言った。
「いつもは、その状況に応じて、妖魂(ようこん)……アヤカシが降りてくるニャ。その場合、綺たんの意志と身体のイニシアティブは、ほぼ百パーセント、綺たんにあるニャ。でも、なんらかの事情で、アヤカシの方が先に降りていることがあるみたいニャ。その場合、綺たんの意志と身体の主導権は、五対五、下手をすると、今の綺たんじゃ、アヤカシに意志と身体がアヤつられる怖れがあるニャ」
「げ。それ、たいへんじゃん!」
「ゴウエツの時のこと、思い出して欲しいニャ。綺たん、どんな心理状態だったかニャ?」
 ええと。あの時は、赤いビー玉を拾ったら、声が聞こえてきて、鈴を鳴らしたら、力がみなぎってきて、なんか、ゴウエツに勝てるっていう自信が、確信レベルでわいてきたような気がする。
 そんなことを言うと、タマちゃんは言った。
「山童だったから、まだよかったニャ。でも」
 と、あたしのブレスレットを見る。
「タダシたちに共鳴しているアヤカシの中には、質(たち)の、あまりよくないヤツもいるニャ。今、降りているのは、そういうヤツニャ!」
 胸の中から、不安がわき起こり、全身を包むのを感じた。それが声に乗っちゃったみたいで、自分でもはっきりとわかるぐらい、弱い声であたしは聞いた。
「……どうしたらいいの?」
「とにかく、修行して、自分をレベルアップさせるしかないニャ。今日のところは、あっしも全力でフォローするニャ。それに、すでにアヤカシが降りてきてるっていうのは、今日、何かがあるということニャ。絶対に、綺たんは、あっしが護るニャ!」
 初めて、タマちゃんが、頼もしく見えた。


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