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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK W 作者:ジン 竜珠

第4回 伍・四
 今日は、朔羅が下宿するために、ここへやってくる日だ。
 あたしもいろいろとお手伝いするつもりで、朝から、ストレッチとかしてた。
 しっかし、驚いたわよ、マジで。
 この間、木曜日に蜚と、跂踵っていう鳥の妖怪を退治したんだけど、その時に、彼女が妖怪退治の技術とか持ってるって、知らされて。
 マンガの世界だと思ってたけど、もしかして、普通に転がってるの、そのテの人って?
 まあ、それはいいんだわ。
 で、午前十一頃かなあ、引っ越し業者のトラックと、光奈さんの車が到着したの。
 でもね? 引っ越しトラックっていっても、なんか、郵便局の配達トラックと同じぐらい。家財道具、積んでない感じ。
「朔羅、なんか、荷物、あんまり積んでないみたいだけど?」
 あたしが聞くと、光奈さんの車から降りた朔羅が、トラックを見た。
「高校卒業までしか、ここにいないし、ものがたくさんあっても、邪魔なだけだし」
 と、そっけない。
 ……。
 人それぞれなんだなあ。
 ていうかね?
 服、しまうのに、ハンガーラックっていうのは、有り得ないと思うけど?
 あたしがそんな事を言うと、朔羅はあっさりと言った。
「適当なもので『覆い』を作れば、埃、被ったりしないし」
 この子、本当に「女の子」なのかしら?

 朔羅の部屋は、あたしの部屋の、隣の隣。本当はもっと離れた部屋だったらしいけど、あたしの希望を通してもらった。
 糺さんも緋芽さんも、最初は余りいい顔してなかったけど、光奈さんが「いいじゃんか」って言って、それで決まった。この三人の力関係が見えてきた。いつだったか、光奈さんは「分家」だって言ってたけど、本家よりも強いっていうことは、個人的になんか「貸し」でもあるのかしらね?
 まあいいや、そんなこと。
 で、荷物の持ち運びは、業者さんもいたんで、すぐにすんだし、荷ほどきはあとでする、ってことだったんで、あたしと朔羅と光奈さんとタマちゃんは、例の無茶苦茶広い居間で、おそば食べてた。
 最初はどこかから出前、ってことだったけど、朔羅が「お蕎麦セット」を持参してきたんで、それを調理することにした。
 でもね?
 調理部所属の身としては、出来合いのおそばを、そのまま調理っていうのは、沽券に関わるのよ!
 というわけで、あたしは、セットの材料をベースにしつつ、ちょっと一手間、つけ加えることにした。
 お手伝いさんたちは、「自分たちがするから」って言ってたけど、これぐらいはさせて欲しいなあ。なんかね、ここの家って家事は当番制ってことだから、あたしにも調理当番が回ってくるって思ってたんだけど、緋芽さん曰く「『和の姫』に、炊事当番をさせるわけにはいかない」ってことで、結局、あたしは、お台所に立たせてもらえないのよね。
 そんなに気をつかわれると、かえって居心地悪くなる。いつか、きちんとお話しした方がいいかも知れない。
 今日は、糺さんも緋芽さんも、お昼前に出かけたんで(「アドバイザー」のお仕事だってことだった)、その隙にお料理をさせてもらった。
 なんていうか、うちの学校の調理室と同じような部屋がある。ほんと、すっごいわ。冷蔵庫も大きいのが三つ、小さいのが三つあるし。……あ、もしかして、一つは冷凍庫かな?
 具は天ぷらだったんだけど、冷蔵庫にかまぼこがあるし、春菊もあるし、おねぎもあったし。お出汁はついてたけど、やっぱりここは、腕を見せないと!
 ついでに生卵も落としちゃった。光奈さんは「バランスを考えろ」って呆れてたけど、いいよね?

 おそば食べてるときに気がついたけど、タマちゃん、なんか機嫌悪い。猫耳出して……関係者しかいないし、最近じゃ、タマちゃん、学校でもあたしと二人きりの時は猫耳出してるし、いいのか?……あからさまに朔羅のこと睨んでる。
「ね、タマちゃん。もしかして、昔、朔羅となんかあった?」
 あたしが知る限り、この二人、初対面のはずだけど、ひょっとしたら昔、顔合わせたことがあるのかも知れない。なんていったって片方は妖怪、片方は妖怪退治屋だし。
 あたしの言葉にタマちゃんは、おそばくわえたまんま、首をフルフルと横に振って言った。
「知らないニャ、こんなヤツ。でも、なんか空気が嫌なのニャ」
「空気?」
 あたしが首を傾げると、タマちゃんは頷いた。
「よくわからないけど、こいつが近くにいると、悪い妖怪と闘っているときのことを思い出して、落ち着かないのニャ!」
 あたしは、光奈さんを見た。
「あるんですか、そんなこと? 例えば、妖怪退治屋が、普段から、なんかそんな『もの』を出してるとか?」
 光奈さんは、ザルからおそばの、お鍋からお出汁のおかわりを注ぎながら、言った。
「たまにあるよ、そんなこと。でもオレが見る限りじゃ、朔羅の気配断ちは、相当なレベルだけどな」
「ふうん。ていうことは、タマちゃんの感覚が鋭いってことか」
 タマちゃんを見ると、やっぱり、朔羅のことを睨んでた。


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