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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK W 作者:ジン 竜珠

第2回 伍・二
 不意に、現実に戻ったのは、少女が気合いとともに、コチョウを蹴ったからだった。金属的な残響音とともに、コチョウが地に叩きつけられる。どうやら、少女が高くジャンプして、回し蹴りを喰らわせたらしい。
 少女から人間とは異質の「気」が噴き出しているのがわかる。あれは、間違いなく「妖気」だ。ということは、あの少女も妖怪なのだろう。
 だとすると、呪災の避雷針だという「ある人物」を追ってくる「ある者」も、人外の怪物かも知れない。
 朔羅は、竹刀袋から二振りの霊剣を取りだした。祖父が、業者に作らせた特注品だ。模造刀の類いになるが、実際に何かを斬ることができる。ちなみに朔羅が所持することについて、法的問題は一切クリアしていない。だから、ある種の暗示呪術を使って、普通の人間は気にしないようになっている。
 もっとも、そのような呪術が通じない人間もおり、そのような人間が警察関係者にいた場合は、「ある名前」を出せば、大目に見てもらえることになっているという。事実、一度、警察官に職務質問をかけられたことがあるが、「ある名前」を出したところ、どこかに確認を取った後で、一切、お咎めがなかった。
 それはともかくも、妖怪と接敵するようなことになることを考えて、剣に霊力を通しておいた方がいいだろう。
「神通神妙神力(じんづうしんみょうしんりき)。謹請(きんじょう)、三鬼大神(さんきたいしん)、この霊剣に神威(しんい)降(お)りませ」
 ここまで咒(しゅ)を唱えたとき、コチョウと格闘している少女が何かに気づいたように、キョロキョロし始めた。どうやら、霊剣に通した霊力の流れを感知したらしい。これだけ離れていても、朔羅の周囲の「気」の流れを感知できる辺り、あの少女はかなり高位の妖怪かも知れない。対峙するようなことになったら、もしかすると朔羅では手に余るかも知れない。幸い、朔羅のことまでは、気づけていないらしく、こちらを視認する気配はない。
 朔羅は引き続き、咒を唱える。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・前・行。天地玄妙、神力赫々(しんりきかくかく)」
 九つの単語……九字に合わせて、剣で空中に「ある文字」を書く。右手で書く字を左手で書くときは、それは鏡文字になっていた。
 霊剣に霊力がチャージされたのとほぼ同時に、何者かが、背後の道、正確にはここへ上がる道と、降りていく道の二股のところで、誰かの気配がした。
 どうやら、聞かされていた人間たちが来たらしい。
 朔羅は、その位置から、下の道まで、飛び降りた、五メートルぐらいの高さがあったが、修練でこのぐらいの高さから飛び降りることはしているので、問題はない。
 着地して剣を構える。その瞬間!
「……実!?」
 こちらへ駆けてきたのは、篠崎実その人だった。
「朔羅!?」
 実も、仰天したのか、立ち止まり、固まったように朔羅を見る。
「どうして、君がここに!?」
 実の言葉に、朔羅も問い返す。
「実こそ、なんで、こんなところに!?」
「俺は、ここへ来れば、助けてくれる人がいるからって……!」
 まったく話が見えない。
 困惑していたら、実の後について、若い男女が現れた。一人は眼鏡をかけた優男、一人はショートカットの女。
 実が振り返り、身構える。どうやら、逃げてくる「ある人物」は実らしい。それはつまり。
「……あなたが、避雷針……」


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