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作品名:今日も杏とて。継 結之章 作者:ジン 竜珠

第4回 結之章・肆
 だが、この木は確かに大木だが、一枚の葉もない、枯木(こぼく)だ。この女の心が如何に惨めなものであるのか、思い知らせてやろう。
 私は、また、念を送った。
 冷たい風が吹いてきた。それに混じるは、雪の欠片。猛吹雪だ! 女が自分の身体を、自ら抱きしめるような仕草をする。このまま、枯木とともに凍えるがいい。
 だが、その時、一人の女がやってきた。三十前だろうか、スーツを着て、少し、エネルギーレベルの落ちた女だ。だが、そのエネルギーレベルは、落ち気味とはいえ、安定している。これから上昇していくのが感じられる。
 その女が、笑顔を浮かべ、あの女と目線を合わせるようにしゃがんで言った。
「冬の寒さがあるから、春に桜の花が咲くのよね」
 その言葉に、寒風がやみ、木の枝に桜が咲き始めた。
 いや、咲き乱れているといった方がいい。
 舞い狂う雪は、桜吹雪へと姿を変えていた。
 なんということだ!
 いつの間にか、スーツの女がいなくなり、あの女一人になっている。
 だが、あるモノが現れるのが見えた!
 今度は、どうしようもできまい!
 妖魔が一匹。この女に恋い焦がれながら、想いを遂げることができず、あまつさえ、この女によって冥界送りにされた男だ。
 こいつは、正真正銘、この女に恨みを抱いているはず。今なら、この女は弱っている。さあ、今こそ、想いを遂げろ!
 妖魔が女に近づいた。
 だが。
 妖魔の姿が歪み、光とともに人間の姿になった。
『先輩、有り難う。本当に有り難う。おかげで、僕は最期の最期の瞬間、先輩の優しい心に触れることができました。もしあの瞬間がなかったら、僕は先輩がどんな人か、理解しないままだった。僕は、自分で勝手に作り上げた「先輩の幻影」を抱えて、暗い中をさまよい続けていたと思う。先輩が本当に素敵な人だっていうのを知ることができて、僕は本当に倖せでした。先輩の真実を知ることができて、そんな素敵な人を好きになることができたのは、僕にとって誇りです』
 闇が晴れた。
 そして、どこからともなく、少女の声が聞こえた。
「この世の中、誰かが誰かと繋がってる。どこかで出会った誰かに、助けられることだってある」
 覆い被さるような天井が、青く突き抜けるような空に変わり、太陽が輝き始めた。
 ……そんなバカな!!


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