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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK U 作者:ジン 竜珠

第7回 参・七
 午後八時二十分だった。
 市の中央部・羽心侍(うしんじ)エリアの中央町(ちゅうおうまち)二丁目に繁華街があるが、蒼川保は、そこを歩いていた。
 それを認め、地鳴忠士は近づいた。
「こんばんは、蒼河先生」
 後ろから声をかけられ、保が振り向く。その目が見開かれた。
「ああ、あんた!」
 その反応でわかったが、あえて問うてみる。
「どうかなさいましたか?」
「あ、いや、その」
 ちょっと気後れしたのか、保が言いよどむ。だが、言わねば話が、……自分の目論見が伝わらないと判断したのだろう、口を開いた。
「あの使い魔が、昨日の夕方頃からいなくなったんだ! 夜になって呼んでも現れないんで、もらった名刺にあった、あんたの連絡先に電話したけど、『現在使われてません』って! だから、あんたに連れて行かれたバーで、連絡先がわからないか、と思って!」
 名刺の連絡先。あんなものはデタラメだ。誰が、「呪災の避雷針」如きに、本当の連絡先を教えたりするものか。確かに、人間世界に楽園を築くための、尊い礎となる人間だ。それなりに敬意を表するが、「避雷針」に選ばれるということは、所詮、その程度の御魂(みたま)だということ。
「そうでしたか。そういえば、名刺、古いままだったかも知れません」
 白々しい言い訳だ。相手が信じるかどうか疑わしいが、疑いを差し挟まれる前に、こちらから、話を進めよう。
「実は、少々、厄介なことが起こりましてね」
「厄介なこと?」
 保が怪訝な顔をする。
「ええ。例の、疫病をまき散らす妖怪、思ったより、早く現れそうなんです。蜚(ヒ)には、それを抑える役目を命じることにしました」
 大ウソだ。こちらの世界にとどまるための「因呪」を滅ぼされてはいないが、それでも、因呪が部分的に破壊された。わかりやすくいうと、大ダメージを与えられ、しばらく使えない状態にされてしまった。
「そうか」
 と、保が少々、落胆したような表情になる。
「ですが、ご心配なく。替わりの使い魔を、ご用意してあります」
 と、忠士はジャケットの内ポケットから一枚の金属製の呪符を取り出す。長さは十五センチほど、幅は七、八センチほど、紙幣サイズの短冊様の呪符だ。蜚の呪符とサイズが同じだが、書かれてある文字や記号が違う。
「これには、蜚と同様の能力を持った使い魔が封じてあります。儀式を行えば、その使い魔が使用できるようになります」
 と、その札を保に渡す。
「そ、そうか」
 と、保が札を受け取り、しげしげと見つめる。
「呪文をお教えしましょう。これを使って、病気になった方々を救っていけば、すぐにあなたのことがSNSで話題になります。そうすれば、あなたのことが噂になり、誰もあなたを放ってはおかないでしょう」
 保が頷いた。
「で、今度の使い魔は、なんて名前なんだ?」
「跂踵(きしょう)と、いいます」


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