小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK U 作者:ジン 竜珠

第4回 参・四
 糺が来ているのは、志火島(しひと)市の北西部だ。志火島市は、地図上は新将岳市の北西方向の内陸部にある隣街だ。だが、地理上は大岳の山間部と接しており、幹線道を通って、かなりの時間を要する。実際、糺が家政担当の女性……いわゆるお手伝いの運転する車でここまで来るのに、二時間かかった。
 もっとも、「ここ」自体が志火島市の北西端にあることに加え、糺の住む将番礼(しょうばんれい)からは、一度、主要幹線道の方へ出る必要があるため、余計に時間がかかったのだが。
 山間道などがあるにはあるが、不案内なところもあり、安全な道を通ったというわけだ。
 約束の時間は午後零時三十分だったが、およそ五分ほど早く着いた。そして、待ち合わせの相手、女薙 佑杖(めんなぎ すけより)……綺の父親も、待ち合わせ場所のファミリーレストランに来ていた。
 糺は、白いシャツに紺のスラックス、薄手のベージュのジャケットだ。
「すみませんね、女薙さん、ゆうべのお電話で急にお呼び立ていたしまして」
 さすがに店内は満席だった。着物を着てこようと思ったが、目だたない平服にしてよかったと思いながら、佑杖がキープしていたボックス席にかける。お手伝いには、近所の好きなところで食事をとるように言っておいた。
「いいですよ、時間に融通が利きますから」
 時間に融通が利く。もしかしたら、深く聞かない方が、いいようなことかも知れない。佑杖が着ているのは、紺の上下に、白いワイシャツ、ワインレッドのネクタイだ。仕事中であることは間違いのないこと。もしかしたら、この四月に異動した部署が……。
 そんな思いが顔に出たのか、佑杖は破顔して言った。
「この四月からスーパーバイザーになりましてね。十分程度なら、移動時間を使えば、工面できますから」
 そうは言っているが、相当、無理をしているのがうかがえる。「くれぐれも事故には気をつけてくださいね」と言って、糺は、話し始めた。
「女薙さん、あなた、わざと、綺さんに何も教えませんでしたね?」
 その言葉に、佑杖は苦笑いを浮かべる。
「何を言ってらっしゃるのか、わかりませんが、私は、ただの落伍者ですから」
 佑杖は、糺より二十歳ほど年上だが、年下の糺にも敬語を使う。その腰の低さを見習いたいと思いながら、糺は言った。
「あなたは、早くから綺さんの素質を見抜いた。そこで、霊学や霊術を教えるのをやめた。おそらくは、綺さんに、一人の女性として普通の人生を歩んで、普通の幸せを掴んで欲しかったから。違いますか?」
「買い被りですよ。私、先代の期待に応えられなかった、落ちこぼれなんです」
 と、佑杖は頭をかく。
 だが、それに構わず、糺は言った。
「佗磨姫さんの話では綺さん、呪符のチョーカーを自然に手に取ったそうです。多分、呼び合ったんですね。それに、御魂玉(こんぎょく)を使う前は怯えていたのに、御魂玉を使ったあとは、精神的に平静に戻っているようです。それも、まるで何もなかったかのように。これは、彼女に御魂玉に適応する素養がある、ということ。姉さんには、そこまでの精神的適応力は、ありませんでしたし」
 その時、糺の頼んだエビグラタンと、佑杖の頼んだ海鮮チャーハンが運ばれてきた。
 一旦、二人は話を中断した。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 435