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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK U 作者:ジン 竜珠

第3回 3
 トレーニングウェアに着替え、あたしとタマちゃんは、中庭に出た。
 この間も思ったけど、本当に広い。
 この庭、バスケットのボールのコートが二面ぐらい、とれそう。
「じゃあ、簡単な錬気から教えるニャ」
「れんき?」
「うぃ。気功法ニャ」
「きこうほう?」
 タマちゃんが、苦い顔になって、右の人差し指の先を、自分の右のこめかみに当てた。
「綺たん。大事なこと聞くけど」
「うん?」
「霊学とか、霊術とか、神秘学とか、道術とか、どの辺まで知ってるのかニャ?」
「……ごめん、今の、一言一句がわからない」
 なんか、魔法の呪文にしか聞こえなかったけど?
 ふう、と、溜息をついて、タマちゃんは言った。
「とりあえず、その都度、教えていくニャ」
 そして、
「トレーニングの補助具を持ってくるから、ちょっと待っててニャ」
 と、母屋の方に戻っていった。
「身体をほぐしてて欲しいニャ」
 その言葉を残して。

 で、五分ぐらい経った頃だった。タマちゃんがコンビニでおむすび三つとお茶のペットボトルを買ったときにもらうような、ビニルの袋を一つだけ提げて、こっちに向かってきた。
 でも、なんだか、ものすごく重そう。両手で持って、腕だけじゃなくて上半身全体で、持ってる感じで、足も一歩一歩、踏みしめてる感じ。歯を食いしばってるのが、その表情からわかる。あ。猫耳、出てる。
 ようやく、って感じであたしのところまで来ると、タマちゃんは袋を地面に置いて、肩で息をしてる。
「綺たん、これ、つけるニャ」
 ゼェゼェ言ってるタマちゃんを怪訝に思いながら、あたしは、袋を覗き込んだ。ピンクのリストバンドが一組と……、黒いのが一組、これはアンクルバンドかな?
 タマちゃんの様子から考えると。
 荷重負荷トレーニングかあ。
 あたしもダイエットでやったことがあるんだ、荷重負荷の筋トレ。とりあえず、一週間は続いたわよ?
 あたしを抱えて歩けるタマちゃんが、こんなに重そうにしてるっていうことは、相当、重いんだろうなあ。
 ていうか、人間が着けても大丈夫な重さなのかしらね、コレ?
 あたしは試しに、ピンクのリストバンドを一つ、手に取ってみた。
「……あれ?」
 軽い。重いどころか、これ、普通のリストバンドと同じ。
 もう一つのヤツも手に取ってみる。まったく普通のリストバンドと変わらない。
 それじゃあ、と黒いヤツも出してみる。全く普通の重さだ。
 じゃあ、袋の方が重いのか、と思ったとき、中身がなくなった袋が、風に吹かれて、転がった。
 あたしは、タマちゃんを見た。
「タマちゃん」
「なんだニャ?」
 タマちゃんは、首を回してコキコキと鳴らし、手を拳に握って、肩とか腰とか、トントン叩いてる。
 おっさんか、お前は!?
 まあ、いいわ。
「これって、そんなに重かった? なんか、ものすごく重そうにしてたけど、普通じゃん、これ?」
「これは」
 と、タマちゃんが説明を始めた。
「呪術の系統とか、種類とか、いろいろ条件はあるけど、その条件を満たしたアイテムは、あっしには、ものすごく『重く』なるニャ。この補助具は、その条件を持ったアイテムだから、あっしには、とても重いんだニャ。だから、例えばその条件を満たした呪具とかを、鞄とか袋の中に入れてたら、あっしには、それがものすごく重く感じるニャ」
 その言葉を聞いて、あたし、ちょっと思ってみた。
 このリストバンドとアンクルバンドを、タマちゃんに着けさせたら、彼女は、満足に動けない。そうしたら、彼女のことを自由にできる。
 でも。
 学校での「丹安武佗磨姫さん」要するに「クールビューティー佗磨姫さま」ならいいけど、タマちゃんじゃなあ。「あの最中」に「ニャ」とか「うぃ」とか言われたら、ガチで萎えるし、それに、こいつ、そもそも猫だし。
「? 綺たん? なに、深ぁい溜息、ついてるニャ?」
「……うん。理想と現実との乖離って、人類が克服するべき心理的大命題なんだなあ、て」
「綺たん、難しいこと、知ってるニャ」
 タマちゃんが感心したように、あたしを見た。


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