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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK U 作者:ジン 竜珠

第13回 参・十三
 午後七時四十五分。
 あの跂踵とかいう新しい使い魔の声に従い、市の中心分・羽心侍の商業区に来ていた。そして。
 裏通り、とまでは言わないが、少し人通りの少ない通りに、患者がいた。着ている制服から判断して、市内の私立新将岳女子校に通う生徒だろう。
 なんで女子高生が、こんな裏通りも同然の通りにいるのか、奇妙ではあったが、それでも「患者」に違いはない。
「ねえ、チューリン、大丈夫?」
 見たところ、ショートヘアの背の高い女の子が、おさげの小柄の女の子を介抱しているようだ。おさげの女子の症状は見たところ、胸部疾患のようだ。胸を押さえ、へたり込み、肩で息をしている。
 周囲に人影はない。一瞬、跂踵が人を遠ざけているような感じがあったが、どうでもいい。とにかく、患者なのだ。治すべき人が、そこにいるのだ。
「どうかしましたか?」
 その声に、背の高い女の子が立ち上がる。保と、それほど背丈は変わらないようだから、百七十センチ程度だろうか。
「ええ、急に苦しみだしちゃって」
 そして、おさげの子を見る。
「この子、特に心臓に疾患はないし、胸部にも既往歴はないって言ってます。過換気を起こすような状況でもなかったし、さっき飲んだジュースに、この子がアレルギーを起こすようなものは入ってなかったし。一体、何がどうなってるのか」
「君、詳しいね」
 驚いた。ただの女子高生だと思ったら、なにやら医学知識がありそうだ。
 女の子が言った。
「あたしの父、市内で開業医やってるんです。父からは『跡、継げ』とかって言われたんですけど、あたしは……。ああ、今はそんなことはどうでもいいんです!」
 保は、おさげの女の子を見た。例によって、「わからない」。通常の医学的所見が、まったくあてはまらないのだ。やはり、妖怪の呪い、としか表現できない。
 となると。
「これ」
 と、保は背の高い女の子に、薬包を渡す。
「これは?」
 女の子の問いには答えず、保は、ただ、薬包を開いて飲むようなジェスチャーをする。
 ちょっとだけきょとんとなった女の子だったが、やがて薬包を開き、中の粉を見た。ニオイを嗅ぎ、右手の薬指の先にちょっとだけ、つけて舐める。そして、じっと、保を見た。
「これ、なんかの『灰』ですね?」
 それには応えない。地鳴という占い師から薬をもらったとき、念のため、自分でも確認できる範囲で調べてみた。どうやら、草木灰(そうもくばい)の類いらしかった。跂踵という使い魔を預かったとき、それとなく聞いてみたが、「秘伝の呪符を焼いて、祈願したものに、自然薬を混ぜたもの」という答だった。
 だから、
「民間療法の自然薬だよ」
 とだけ言った。


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