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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK U 作者:ジン 竜珠

第1回 1
「あ! 気がついたニャ!」
 目を開いて、まず一番に聞こえたのは、タマちゃんの声だった。
「こ……こ、は?」
 頭が、なんか、重い。なんていうか、変な濁ったゼリーとかを頭の中に詰め込まれて、そのゼリーが、のろのろと蠢いてる感じ。
「天音の家だニャ」
 ああ。板張りの天井が見える。あたしが下宿してる部屋だ。
 ……そういえば、今さらだけど。あたし、「ここに下宿しろ」って言われたとき、なんで普通に受け入れたんだろ? 拒否るよね? ていうか、なんで、パパも「ご厚意に甘えなさい」とかって、言ってたんだろ?
「綺たん?」
「え? ああ、タマちゃん」
 あたしは、上半身を起こそうとした。それをタマちゃんが押しとどめる。
「あたし、あれから、どうなったの?」
 あたしの記憶に、途切れたところがある。最後の記憶は、大岳(だいだけ)の山の中。でも、今は、下宿先の部屋の中。
 そんなことを言うと、タマちゃんが少しだけ、考える素振りをして言った。
「綺たん、蜚(ヒ)の呪いを受けて、倒れちゃったニャ。で、あっしがここまで抱えて帰って来たニャ」
「そう。確か、『ヒ』って、人を病気にする妖怪だったよね?」
「うぃ」
 タマちゃんが頷く。
「確かに、頭が重いけど、でも」
 と、あたしは起き上がった。
「熱っぽくないし、身体もだるくない。病気になったって感じ、ないんだけど?」
 言ってるうちに、徐々に頭の中が軽くなってきた。不思議な感じで、変なたとえになるんだけど、まるで、何かが頭の中の濁ったゼリーを、吸い出していく感じ。
「え……えっと。それは……」
 と、タマちゃんが何か考えるような素振りを見せた。そして。
「そ、そう! 綺たんは『和(にぎ)の姫』だニャ! だから、呪いが、きかないニャ!」
 なんだか、「言葉を選んでいる」みたいな言い方だなあ。
 その時。
「綺ちゃん、気がついた?」
 いきなり襖が開いて、緋芽さんが入ってきた。
「どう、佗磨姫さん? ……ああ、気がついたのね? 大丈夫?」
 気遣うような表情で、緋芽さんがあたしを見る。
 その時、ちょっとだけ違和感があったけど、それについて追求する前に、緋芽さんが言った。
「体調は、どう?」
「ええ」
 と、あたしは答えた。
「もう、大丈夫です」
 これは、強がりなんかじゃない。本当に今は頭も身体も軽い。
「そう」
 と、緋芽さんが安堵の笑みを浮かべる。
 その時、何気なく、壁掛け時計を見た。
 十一時。
 記憶をほじくる。
 大岳に行ったのは、部活が始まる前、つまり、放課後、もっと言えば午後四時以降だと思う。
 あの時、まだ明るかったから、夜じゃあなかった。
 あたしは、窓を見た。
 明るい。
 ということは、夜の十一時じゃない。
「ね、タマちゃん」
「うぃ?」
「今日、何曜日?」
「火曜日だニャ」
「……そうか。ていうことは、十二時間以上、あたし、寝込んでたわけね?」
「そうだニャ」
 ちょっと考えてみた。


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