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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK T 作者:ジン 竜珠

第8回 8
 長田社長の部屋を出たとき、携帯が鳴った。
「もしもし。……ああ、妃女(ひめ)か。どうした?」
 電話の主から、話を聞き、忠士は幾分、意外な心持ちで答えた。
「ほう? ゴウエツを倒したか。あの化け猫、なかなかやる。……え? 倒したのは、丹安武(にゃん)佗磨姫(たまき)じゃない? 誰だ? 二年女子? ……ほう、あの娘か」
 少し考えた。まさか、マークするほどのこともないと思っていた、ただの女子高生が、「交(アヤ)」の力を持っていたとは。
 これは、計画を少し変えねばならないかも知れない。
「妃女。その娘に張りつけ。くれぐれも素性を知られるなよ?」
 電話を切り、忠士は、エレベーターに向かった。
「交の力」を持った娘が現れたといっても、気にするほどのことはないのかも知れない。「あの時」、「和の姫」が生まれなかった、ということは、それが「世界」の選択、ということ。
「やはり、天命(てんめい)……天の命令は、我ら『天戒冥傳(てんかいメイデン)』にある、ということだ」
 そう呟き、忠士はくぐもった笑い声を立てた。

 あたしが通っているのは、私立新将岳(しりつしんしょうがく)女子高等学校だ。昔は「溝脇(みぞわき)学園臈長(ろうちょう)女子高等学校」って名前だったらしい。この「臈長」って言葉がどんな意味か、調べたことがないから詳しくわからないけど、聞いた話じゃ、なんか「洗練された素敵なレディ」っていう意味があるらしい。昔はこの学校、堂々と「良妻賢母の育成」を謳ってた、っていうことで、そんな名前にしたんだとか。
 それが、十二、三年ほど前、ここ新将岳市にあった、もう一つの私立の女子校と合併して、その時に、「新将岳女子」に名前が変わったらしい。いわく「新将岳市に冠たる高校になる」からだそうだ。
 偉い人の考えることって、よくわからない。
 ちなみに、あたしがこの高校を受験したのは、良妻賢母になりたいからじゃない。この高校、昔から栄養学とかお料理とかにも力を入れてて、で、結構な数の調理師とかを輩出してるっていう。有名なお店のシェフとか、プロの料理研究家とかも、結構いる。あたしの夢はパティシエール。だから、隣街でもあるし、ここを選んだって訳。
 ここ新将岳市は、東南部が海に向かって拓けた、三日月型をした市で、将僕市(しょうぼくし)が将番礼町(しょうばんれいちょう)と大岳町(だいだけちょう)と合併してできた市だ。あたしが住んでたのは、離れたところにある志火島市(しひとし)。電車で通うのは、一時間以上かかったりして、ちょっと厳しいんで、こっちに住んでる親戚のお姉さんの部屋に下宿してる。いわゆる「域外入学」っていうヤツで、あたしの他に、全学年であと、八人いる。
 部屋に帰ると、もう午後六時半。まだ、部屋の主である夏弥(かや)姉(ねえ)は帰って来てない。
「さて、と。それじゃあ、お夕飯作るか」
 夏弥姉が帰ってくるのは、多分、八時頃。今夜はクリームシチューにするつもりで、材料を買ってきた。着替えるために部屋に入る。濃いベージュのブレザーを脱ぎ、クローゼットのハンガーに掛ける。そして、グリーンのリボンタイを外そうとしたとき。
「……このチョーカー。ほかの人には、見えてないのよね……」
 あたしは、首に装着したチョーカーに触る。中央にあるのは、クリスタルの鈴。で、この黒いベルト部分は「呪符」っていうもので作ってあって、何らかの特殊な視力を持った人以外には、見えてても「一切、気にならない」ようになってるらしい。
 確かに、あの時、タマちゃん……丹安武さんが首から外してたけど、あたし、それまで彼女がそんなものを着けてたなんて、気がつかなかったしなあ。
 あたしは、さっき、聞いた話を思い起こしていた。


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