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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK T 作者:ジン 竜珠

第7回 第壱章 ある空き地での騒ぎのこと
 社長室に通された男は、随分と若いようだった。
「フード工房オサダ」の現社長・長田(おさだ)考三郎(こうざぶろう)は、「地鳴(つちなり) 忠士(ただし)」と名乗ってソファに座っている男を見た。
 着ているグレーのスーツや、青いシャツ、着けている赤いネクタイは、ごく普通のもののようだ。もしかしたら、見えないところに贅をこらした特注品かも知れないが、外から見てわからないのでは、意味はない。
 左腕にある時計も、ありきたりの品のようだ。これも、もしかしたら特別の機能を持っているのかも知れないが、パッと見て普通の時計に見えるのでは、結局、普通の時計と同じだ。
 男は、柔らかい笑みを浮かべているが、どこか人を見下しているような気がして、正直、腹立たしい。
 しかし、この若い男は、社内の人間しか知らないことを知っていたのだ。ただ者ではないのかも知れない。
 窓から差し込むのは、赤い夕陽。そのせいでもないだろうが、考三郎の感情に紅い怒りにも似たものが、わずかに浮かんでいた。それを隠しもせず、考三郎は言った。
「なぜ、君のような部外者が、あのことを知っているのだ!? よもや、ここにスパイでも送り込んでいるのか!? それを使って、社の秘密を掴んで、金でもせびろうっていうんじゃないだろうな!?」
 それを適当にいなすように、忠士は言った。
「どのように解釈なさっても、結構ですが、このままだと、確実に死者が出ますよ?」
 ぐうの音も出ない。新工場の建設のために、ある土地を購入し、地質調査を終えて、基礎工事に入ったところで「アレ」が現れた。一週間前のことだ。そして、その時に、一緒に見つかった「あの動物」を、気味悪く思って、殺させてしまった。
 だが、殺した作業員が謎の高熱を発して、現在も入院中なのだ。医者の話では、このままの症状が続くと、脳に深刻な後遺症が出てしまう怖れがあるとのことだった。
 工事作業員の一人がどうなろうと知ったことではないが、労災問題に発展し、その責任を追及されるのは困る。もちろん、作業員が病気になったことと、考三郎との間に因果関係があると証明できるようなものではない。
 だが、今の時代、どういう風に話が拡散するかわからない。だから、この件については、厳重に口止めをしたが、この男は、そのことを知っていた。
 ここへは「占い師」ということでやってきたが。
「……どうすればいい?」
 考三郎は、計算した。この男がどんな要求を出してくるか、わからない。ただ、あの日以来、体調を崩す者が続出しているのは確かだ。実は、考三郎自身も、この朝から、常に眩暈感にさいなまれている。もし、社員や作業員の誰も、秘密を漏らしていないとしたら、この男は本当に「占い」か何かで、「アレ」の存在を知ったことになる。
 そもそも、新工場の土地に、あんな気味の悪いものがあったと知れると、イメージダウンもいいところだ。だから、誰も口外していないはず。
 だったら、この男が「自分なら、なんとかできる」と言っているのであれば、それに頼るのも、手の一つかも知れない。
 なにせ、「アレ」は、非常に大きく、掘り出して何処か別の場所へ持っていくのは、不可能そうなのだ。
 せっかく購入した好立地の土地、このまま眠らせるわけにはいかない。
 男がニヤリとして言った。
「簡単なことです。あなたに、ちょっとした『協力』を願えたら……」


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