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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK T 作者:ジン 竜珠

第6回 序・六
 そこまで思ったとき、一人の女性が居間に入ってきた。髪が長く、長身の、美しく若い女性。着ているのは、黒いサマーニットに、ピンク色のプリーツスカートだ。年齢は十八歳ぐらいだろうか。だが、もっと大人びた雰囲気を持っている。踏み込んだ表現が許されるなら、何かを……自分自身を見限っているような空気さえ、漂わせていた。
 あくまでも、糺が感じている限りであるが。
「環緒(たまお)さん、もしかして、聞こえましたか、今の話?」
「環緒」と呼ばれた女性が頷く。
「そうですか。では、もう、おわかりですね?」
 今度は、すぐには頷かない。数秒おいて、ようやく、というより、無理矢理、頷いたように見えた。
「あの子に『佗磨姫』の名前を受け継いでもらった以上、『姫』を『磨』くお役を、『佗(にな)』ってもらいます」
 環緒が沈痛な表情になった。
 それに構うことなく、糺は言った。
「あなたには、先代の『佗磨姫』として、お手伝いいただけたら。……今度は、『あの時のようなこと』は、許されませんから」
 環緒が、少しだけ、肩をびくつかせる。
 それを見てとると、糺は、笑みを浮かべた。
「ああ、言い過ぎました。僕も話に聞いただけですから、詳しくは知らないんです。でも、もしあの時に『和の姫』が誕生していたら、世界は違ったことになっていたかも知れませんねえ」
 環緒が下唇を噛む。
 糺は、自分に加虐趣味があるとは思っていない。だが、ここは、相手をある程度、心理的に追い込んででも、使命感を強く持ってもらえたら。
 そんな風に思って、糺は、あえて、こう言った。
「失敗は、許されないんです。わかっていますね?」
 環緒が、頷いた。
 その表情は、複雑すぎて、糺には深く読み取れない。
 わかったのは、「使命感」だけでなく、「逃避」「贖罪」そして、「諦念(ていねん)」だった。


(序 その日、希望は生まれた……かも知れない・了)


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