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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK T 作者:ジン 竜珠

第5回 序・五
 佗磨姫からの報告を受け、青年……天音(あまね)糺(ただし)は、静かに言った。
「見つかりましたか、『和の姫』が。ご苦労様でした」
 携帯電話を切り、傍に座る、着物姿の、ショートボブの女性を見る。
「見つかりましたよ、和の姫の候補。まさか『神裏(かみうら)の御業(みわざ)』を任されていた、女薙家から出てくるとは。これで、我々の願いも叶えられそうです」
 糺は、穏やかな声で言った。実は、相当、興奮していたのだが、どうにか抑えたのだ。ここで興奮して、そのあとでその少女に「脱落」されたりすると、ぬか喜びになってしまう。
 それを聞いた若い女性……糺の姉・天音 緋芽(ひめ)は、溜息をついた。
「なるほどね。どうでも、あたしの代で、『和の姫』が出てくる天命(てんめい)だった、ってことか」
「おや? うれしくないんですか、姉さん?」
「……前も言ったけど。一人の人間に世界の命運を託すなんて、間違ってるわ」
 不満げな姉の言葉と表情に、糺は苦笑を浮かべて言ってみる。
「だから、脱落しちゃったんですか、姉さんは?」
 この言葉に、緋芽がムッとなる。
「……悪かったわね。才能がなくて」
 声を立てて笑ってから、糺は言った。
「何を言ってるんですか。才能って、磨くものでしょ?」
「いちいち、正論だから、腹が立つのよ、あんたの言うこと!」
 そう言って、緋芽は立ち上がる。
「どちらへ?」
「夕餉(ゆうげ)の支度! 今日は、あたしも当番だから!」
 そう言って、緋芽は居間を出て行った。
 その背を見送り、糺は思いを馳せた。

 和の姫の候補が現れた。今のやりとりにもあったように、姉の緋芽が脱落してから、十年もしないうちに候補が現れたということは、やはり、自分たちの代で和の姫を磨かねばならないということだろう。
 それは、言い換えれば、「世界の混濁」が、いよいよ近づいているということ。


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