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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK T 作者:ジン 竜珠

第26回 弐・十
 忠士がいるのは、この街の北西部、大岳町(だいだけまち)というエリアだ。
 ここは、半分が山となっており、平地は少ない。この山間部に、古い民家があるが、これに手を入れ、忠士は拠点としている。
 木造の、この民家の大きさは、豪邸といってもいいだろう。前の所有者は、いわゆる土地の名士だったらしい。
 和室の居間でお茶を飲んでいると、来客があった。この「拠点」に居住しているのは、忠士ただ一人だ。さらに住民票上は、ここに居住者はいない。
 壁掛け時計を見る。
 午前十時。
「いつもながら、時間に正確だな」
 立ち上がり、玄関まで行って、来訪者を招き入れる。
 来訪者は、髪が長く、背の高い若い女性。その名前は、阿木公 美伽(あきく みか)。天戒冥傳(てんかいメイデン)のメンバーで、忠士の部下だ。
「追加の報告を持参致しました」
 美伽が居間に入り、A四サイズの茶封筒をテーブルの上に置く。
「先日、太歳を焼き滅ぼしたのは、やはり、天音のものだったようです」
 忠士は封筒から、書類と写真を出す。
 写真を見ながら、忠士は言った。
「あの化け猫と、女薙の娘だな。一緒にいる娘は、一人は天野(あめの)の娘だが、もう一人は、何者だ?」
 美伽が、首を横に振る。
「まだ、つかめておりません」
「ふん。この化け猫にどことなく似ているから、まあ、おおかた、先代の『丹安武 佗磨姫(にゃん たまき)』といったところだろう」
 忠士は、書類に目を通す。
 写真は、付近に設置された、防犯カメラのものだった。防犯灯による夜間の撮影なので照度が低いが、それでも、何者であるかはわかる。普通乗用車から降り、自動販売機で、何か飲み物を買っているようだ。映っているのは、女性が四人だった。
 書類には、その時に何が起きたか、その後どうなったか、推測であったが、記されてあった。
「どうやら、これであの場所に龍点を打つのは、ほぼ不可能となったな」
 苦々しい思いで呟くと、忠士は書類と写真を置き、用意していた茶封筒を、美伽に渡した。
「新しい、呪災の『避雷針』だ」
 封筒を受け取りながら、美伽が問うた。
「では、新たな龍点候補が見つかったのですか?」
「いや、それは、まだだ。妃女(ひめ)にも探らせているが、……やはり、『ザ・テンス』、その中の『S』の力のせいだろう、龍脈が読めんそうだ。だが、『形代(かたしろ)』を用意しておくのは、ムダではないからな」
 封筒から、写真と資料を見ると、美伽は一礼して、家を出て行った。
「さて。なんとしても、我らの悲願、達成せねばならん。さもなくば」
 そう言って、忠士は、立ち上がり、窓外を見る。
 快晴の日射しの中、ふと、呟いた。
「さもなくば、世界は滅びる。それは防がねばならん。私の代で、必ず、地上に楽園を築かねばならん」


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