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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK T 作者:ジン 竜珠

第16回 壱・十
 光奈さんの「ジャンプ台」で、柵を越え、あたしは、土地の中に入った。
 でも、タマちゃんたちの様子とか、眼からあちこちに放たれるビームとか見てると、体が震えてくる。
 だめ! やっぱり怖い!
 へたり込んだときだった。
 頭の中に声が響いてきた。
『我は天火(てんか)。毒を持って、毒を制すべし』
 不思議なんだけど、その声を聞いた瞬間、なぜかやれると思えてきた。あたしは、ビー玉を入れたブレスレットから、赤いビー玉を出した。
 それを右手で握りしめ、目の前に持ってきて呟いた。
「お願い、力を貸して……!」
 それは、祈りだったかも知れない。
 あたしは、チョーカーの鈴を押し開け、赤いビー玉を入れた。そして、頭に浮かぶまま、呪文を唱えた。
「アハリヤ、アソビハストモウサヌ、アサクラニ、ココニオリマセ、テンカノミタマ」
 右の中指で、鈴を弾く。骨が熱くなった。
 そして、あたしの中に、「炎」を制御する力が生まれているのを感じた。
「二人とも、そこ、どいて!!」
 立ち上がったあたしの声に、タマちゃんと、環緒さんが、素早く、怪物から遠ざかった。
 あたしは自分の中に生まれた「それ」を、空高く放り投げるようにして、右手を天に突き出した。掌から、赤い光の球が打ち出され、十メートルほど上空で、火球になった。そして、その火球が、怪物めがけて、落下した。
 怪物は光を放つけど、やっぱり、五メートルぐらいしか、伸びてない。
 そして、轟音とともに、火の球が怪物に激突し、爆発が起こった。あたしは爆風に噴き飛ばされて、もろに鉄柵に体が打ち付けられた。
 ……痛い。
 環緒さんが抱き起こしてくれたとき、あの怪物はいなくなってて、焦げたような臭いと、黒煙が立ちこめていた。

 午前零時頃だったろうか。
 ベッドの上に横になり、仮眠をとっていた地鳴忠士に、一本の電話が入った。
 ナイトテーブルにあるスタンドの明かりをつけ、通話ボタンをタップする。
「ああ、美伽(みか)か。……そうか、太歳が消えたか。これで、建設される工場を……。何? 儀式で消えたのではない? どういうことだ?」
 話によると、太歳は、焼き滅ぼされたようだという。
 なんということだろう。儀式で消えたのなら、長田社長に、その代価として、建設される工場に自分たちの都合の良い「呪式」を施して、あそこにエネルギーポイントを敷設できたのだが、そうでないとなると。
「……天音の連中が、先回りでもしたか」
 長田社長からすれば、太歳が消えさえすればいいのだから、儀式不要なら、わざわざ忠士の言うことを聞く必要はない。
 苦々しい思いで、忠士は電話を切った。
 また、別の方法で長田社長に恩を売り、あの場所に「龍点(りゅうてん)」を打つか。あるいは、あの場所を諦めて、また時間をかけて龍点を打てる別の場所を探し、呪災(じゅさい)の「避雷針」とする第三者を見繕うか。
 ベッドの上で、仰向けになり、天井を眺めながら、忠士は考え始めた。

 かくして、天音明道、天戒冥傳の暗闘が始まる……。


(第壱章 ある空き地での騒ぎのこと・了)


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