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作品名:アヤシの杜のアヤカシ同盟 BLOCK T 作者:ジン 竜珠

第1回 1
 目の前で起きていることを「現実」だと判断することは、あたしにはできない。
 でも、現実なんだと思う。
 ……混乱してるわね。
 とにかく。
 四月中旬のある日、放課後の今、あたしは、本校舎の三階、二年生の教室が並ぶ廊下の端っこの、二A教室の出入り口引き戸に縫い付けられている、クラスメイトの丹安武(にゃん)佗磨姫(たまき)さんから、視線が外せないでいた。十メートルは離れてるけど、はっきりと、その様子がわかる。今日は朝から天気が良かったんだけど、関係ないよね!?
 今、彼女は、牛に似た白い怪物に四本の角で(そもそも牛の角が四本あるわけないけど、その時は、おかしいとは思わなかった)お腹を突かれて、引き戸を背に立っているのだ。
 彼女の長い髪は乱れ、美しい顔を苦悶に歪め、その白い手で、牛を押し戻そうとしているように見える。
 丹安武さんていうと、言葉数が少なくて、クールで、成績も優秀で、どっちかっていうと、近寄りがたい印象のある美人さんだ。体が弱いらしくて、体育はほとんど見学。部活もやってなくて、放課後はすぐに帰宅。市の北東部にある家から、バスで四十分かけて通ってる。直接見たり、本人から聞いたりしたわけじゃないけど、告白して、もう何人も撃墜されてるらしい。
 で、みんなから「クールビューティー佗磨姫さま」って呼ばれてたりする。
 女子校だからって訳じゃないと思うけど、うちでは割と普通なのよね、女の子同士の恋愛。
 ……やっぱり女子校だからかな?
 まあ、それはおいとくけど。
 その、女子の憧れの的である丹安武さんが、あたしに気づいた。
「……! どう、して!? どうして、『ここ』に入ってこられたの!?」
 口の中に溜まっていた血を吐き出してから、丹安武さんが、明らかに動揺したような顔になって、言った。
 なんか、凄惨な場面にもかかわらず、ちょっと色っぽい。あたし、丹安武さんには、特に興味はなかったけど、今、ちょっと震えが来た。
 ああ、彼女のことをメチャクチャにしたい!
 血塗れになって弱ってる彼女を、組み敷いて、思い切り壊したい!
 でも、今のあたしは、というと。
 腰が抜けてて、答えるどころじゃない。恐怖が先に立ってきた。
 なに、「ここに入ってこられた」って?
 なに、この牛みたいな怪物?
 ていうか、なんで、丹安武さん、お腹を角に刺し貫かれて、生きてるの!?
「は、早く、ここから、逃げなさい!」
 丹安武さんが、叫んだけど、あたし、腰が抜けてるから、どうにもならない。
 その時、何かに気づいたように、丹安武さんが、あたしを見据えた。
「……そうか。もしかして、女薙(めんなぎ)家のあなたなら……」
 そう言って、丹安武さんは、あたしに何かを投げて寄越した。見ると、直径一センチほどの赤いビー玉。
 それを拾ったとき。
「女薙さん!」
 丹安武さんが叫んで、自分の首に触る。そして、あたしに何かを投げた。


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