とりあえず、描写できなかった設定について。
「dix−12」の坤と艮と、それぞれのヴィネットとの関係性については、ちゃんと書籍で調べたものを元にしています。適当に書き飛ばしたわけではございません。
トレゾーの条件の一つについて。その人間が「これを所有しているのは、世界でただ一人、自分だけ」という自覚のあるもの。
ヴォラールは、善悪の判断がつかない、あるいはそういったことをちゃんと教わらない段階でアカシックレコードと同調(リンク)してしまった者が意識的に「なり」ます。 そのため、善悪の判断を身につけると、自分自身の存在に嫌悪感を抱くようになり、自分の存在を分岐させて、ヴォラールの存在の根幹である「全次元で唯一の存在」を否定してくれる「運命の人」を求める者も現れます。パピヨンが、その一例。
最初の時点で、おぼろげに考えていたのは「和磨と由梨が、なんかの手違いで予定より早く、『そういうこと』にならないようにするための、ストッパーとしてのキャラクターを出そう」。それが沢渡 美春(みはる)。ある意味、彼女は、パピヨンにコントロールされて二人を「見張る」役どころでしたが、まあ、描(えが)く必要なくなったし、それどころじゃなくなったし。
名前だけ出てきた「シレーヌ・ジョーヌ」。念装用アイテムは、耳当ての部分が魚の胸ビレのような形をしたヘッドマウントディスプレイのようなもの。アルミュールは黄色いビキニにパレオ、同じく黄色いパンプス。ついでに「あちきが、トレゾーをいただくでありんすよ!」みたいな、ハイなノリのキャラをイメージしてましたが、回想シーンにすら出さないことにしたので、詳しくイメージしてません。 ちなみに、各ヴォラールは「パピヨン=蝶、昆虫。シャット=猫、ほ乳類。コルボー=カラス、鳥類。ルー=狼、ほ乳類。ドラゴン=幻想生物、シレーヌ=人魚」になっています。本当は四神に合わせたかったんです。「青龍=幻想生物、朱雀=鳥類、白虎=ほ乳類、玄武=は虫類」っていう風に。でも、 「は虫類。……うーん。は虫類?」 ってことで(苦笑)。
防犯カメラのトリックは、簡単でしたかね? ネタバレしたくなくて、いろいろと紛らわしい表現も使いましたが、強引だった感は否めません。あと、推理のところとか。 quatre(第四章)の時点で、実は、こんな展開を予定していました。 「和磨の実力テストの成績は散々だった。それで、美砂子は保護者面談に呼び出され、白根香澄恵……シャットと会う。『トレゾー』の縁者である美砂子には、オンブルの影響力が弱く、そのため、美砂子は香澄恵に強烈な違和感を抱く。そこから『目の前の香澄恵は、何者かが整形でもして、なりすましている。数日前に発見された女性の刺殺体は、やっぱり白根香澄恵のもの』と思い至る。それを沼田に話す。沼田と森は『美砂子の思い過ごし』だと思いながらも、念のため、白根香澄恵(シャット)の指紋と、本物の香澄恵が学校の図書室に残していた指紋を採取して照合。食い違うことを知り、シャットをマークする。警察のマークがついたことに焦りを感じたシャットは……」 この「……」の部分が、「dix(第十章)」の展開です。 書き進めてみると、美砂子、署にいるか県警にいるか、なので、どうにもこの展開に持って行けなくて(苦笑)。 まあ、予定は予定だから。 やっぱり、プロットはしっかりと組まないと、だめですねえ。 ついでにいうと、館端署刑事課・強行犯係が追ってる連続刺殺事件、まず間違いなく、県警から管理官が出張(でば)ってきてる案件ですが、ややこしくなるので、それには触れませんでした。
「か−二百一号」の、内情なんかは、皆様のご想像で補完してください。 たとえば、こんな感じ。
午前一時十一分。防犯カメラ前の映像機器が外され、仲間から、展示室にいるとの連絡が入った。男は、携帯に言った。 「お前、何やってたんだよ!? ギリギリ待てるのは、一時九分までっつったろ!? 映像消すのに、なんかのパターンがないと、俺たちが疑われるんだよ! なんかのエラーとか、プログラムのせいに思わせる必要があるって、言ったろ!?」 小声だったが、怒声だったことはやむを得ない。 『すまん、ちょっと手間取った!』 「仕方ない。お前が入ってきて、盗難に気づいたことにするから! 録画、再開するぞ! 一時撤収しろ!」 『わかった。……なあ、会社、潰れたあと、俺たち、別の会社に移れるって、信じていいんだよな?』 「証拠、握ってるんだ。いざとなったら、あの社長、脅すなりなんなりすればいい。どうせ、資産、たんまり隠してるんだからよ、脅せば、しばらく遊んで暮らせるさ。……そうだ、それもいいかもな。盗ったモンは『例の場所に届いた』って連絡が、今、入った。明後日には、さばけるってよ」
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