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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第84回 dix−13
「陣」はすぐに、解決できた。なので、ドラゴンの手を借りるまでもなかった。
 石や伐りとった樹木を使って、広範囲に何かを仕掛けていたが、以前、盗んで習得しておいた知識にあったものと似ている。
 もし、それが正しければ。
 パピヨンは、その陣をグルリと回った。直径にしておそらく三百メートルぐらいはあっただろうか。石や樹木の配置を見て、推測が正しいことを知ったパピヨンは、「あるもの」を探した。
「さっき、あの位置に『農村』をイメージしたヴィネット……ディオラマ・フィギュアがあったから、八卦の坤(こん)を象徴しているのは明らか。ということは、あそこが奇門(きもん)遁甲(とんこう)の『死門』に間違いない。あそこから入ったら、間違いなく、何処か別の場所へ送り込まれて、当分、迷わされるわね。とすると、反対側には『生門』があるはず」
 果たして、そこには、「石垣に囲まれた倉庫」のヴィネットがあった。
「ここが艮(ごん)……『生門』か」
 パピヨンは、門柱のように立つ、高さ三メートルほどの二本の樹木の間を、通り抜けた。
 空間が歪んだような感覚があった。
 そして、その行く先に、一件のバンガロー風の建物がある。
 その前にいるのは。
「どこまでも、こざかしい娘ねえ、あんた!」
 右手に刀、左手に拳銃を持った、アルミュール姿のシャットが立っていた。

 由梨の心に一体、何が起きているのかわからない。だが、この様子はただ事じゃない。
「おい、由梨! 俺だ! 何があったんだ!?」
 だが、由梨は首を横に激しく振るだけで、何も答えない。
 近づこうとすると、座り込んだまま、俺から逃げようとする。
 ほんとに、由梨に何があったんだ?
 ……まあ、いいか。
 今の俺は、由梨よりも川平の方が気になって……。
 そこまで思ったとき、頭に痛みが走った。
 そして、頭をおさえながら、由梨を見た。
 俺は、由梨のことをどう思ってるんだ?
 由梨は、俺にとって、一体、何なんだ?
 由梨を見ているうち、俺の中で、何かが砕けるような音がした。
 まるで、俺をどこかへ引きずっていこうとする、ガラスの鎖が砕け散ったような、そんな音。
 音がしたっていうのは、錯覚だと思うけど、確かに、そんな感じがしたんだ。
 そして、俺は、その距離を保ち、床に座り込んだ。
「なあ、由梨、覚えてるか、小学校の時のこと。確か、三年生の時だったと思うけど、俺、図画の宿題、やっていかなかったことがあったよな? その時、お前、一枚の絵を差し出して、『俺が描いたことにしたらいい』って言ったよな? それで、その通りにした。そのあとで、お前が職員室に呼ばれて、叱られたらしい、って聞いて、俺、悪いことしたような気持ちになったんだよなあ。それから、中学校の修学旅行! 班行動で、俺、勝手なことしちゃってさ、就寝までの自由時間、廊下で正座させられてた。みんなが楽しんでるときに俺一人が寂しい思いしててさ。そこへお前が、こっそりお菓子持って話、しに来てくれてさ。うれしかったなあ、アレ。そういえば、受験のときもさ……」


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