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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第81回 dix−10
 勢い余るって訳じゃないと思うんだけど、白い影に放り込まれたような感じがあったと思ったら、なんだか姿勢が崩れて、俺は板張りの床に倒れ込んだ。
「いててて……。なんだ、ここ?」
 見た感じ、どこかの山小屋の中っぽい。
 ちょっと汚れてるけど、使用感っていうか、生活感、みたいなものがある。それほどほこりっぽくないし、片付いているしな。
 たとえていうなら、誰かが非常用に確保してる別荘とか、アジトかな?
 ふと、傍に、ベッドがあるのがわかった。シーツは乱雑になってるけど、新しい。やっぱり、誰かが、ここを使ってる。そこに、何かがあるのが見えて、俺は「それ」を手に取った。
「高田 満」。
「たかだみつる、って読むのかな? ……館端中央女子高校の教師か」
 IDカードだった。学校の先生のものだな。ていうことは、ここは、その先生の別荘か。
「でも、別荘だとしたら、ちょっとなあ。廃墟とまではいかねえけど、ここで寝泊まりするのは、俺にはちょっと……」
 そう思ったとき、何か音がした。
 そっちを見ると、部屋の隅で、自分で自分を抱きかかえるようにして、うずくまる、一人の女の子。
「……由梨?」
 そこにいたのは、スウェットに、トレーナー姿の由梨だった。
 近づこうとすると、由梨が叫んだ。
「来ないで!」
 俺を見る目は、すっかりと怯え……いや。
 恐怖に満ちていた。

 駆け抜けた先でパピヨンを待っていたのは、ドラゴン・ヴィオレ。
「……来たか。汝(うぬ)らに、先んじたつもりであったが、妙な『陣(じん)』が敷いてあっての。どうにかくぐる方法を、と思っているうちに、汝が来た」
 断片的な情報だが、それから判断するに、ドラゴンはシャットの動きを、パピヨンたちよりも先に察知した。同じ学校の教師というプロフィルあるいはエッサンスを持っているアドバンテージを使い、事前に動きを察知したのかも知れない。そのあたりはわからない。
 そして、それを利用し、ここへ来たが、何らかの「陣」というものがあって、先へ進めないでいるうちに、パピヨンがやって来た。
 そんなところだろう。
 どうやら、本当に、何らかの法陣のようなものがあったようだ。
 空間を盗んでの移動は、できないのだろう。そんなことが可能なら、ドラゴンもそれをやっているはずだ。だが、そうでないということは、その「陣」は、空間をねじ曲げるタイプのものかも知れない。
 協力してその「陣」を破るのもいいだろうが、いずれにせよ、ドラゴンも「トレゾー」を狙っている。戦いは避けられない。
 どうしたものか、考えていると、ドラゴンが言った。
「汝が、何を考えておるのか、おおよそのところはわかる。ここで儂(わし)と力を合わせても、いずれは儂とぶつかる。ならば、この『陣』を破ることに、儂の力を使わせ、儂が消耗するように仕向けよう。……そんなところであろ?」
 そこまでは考えていない。だが、このドラゴンという女は、かなり「深読み」をするようだ。
 答えないでいると、ドラゴンが不敵な笑みを浮かべて言った。
「では、こうしよう。ここで戦い、負けた方は『トレゾー』から手を引き、勝者の手助けをする。どうじゃ?」
 まるで提案のようだが、そうするつもりであるのは、見え見えだ。
 パピヨンは、光の刀を出現させた。


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