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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第80回 dix−9
「さてと。これから、楽しい時間の始まりだな」
 ルーは、刀を構える。
 元の世界や、別の平行世界に行ったとき、それなりの猛者(もさ)、強者(つわもの)と剣を交えたことはある。その際、自身、命の危機を感じたこともある。
 だが、やはり相手は生身の人間、それまで習得した技能を使えば、どうにか危機を脱することもできた。
 だが、今、目の前にいるのは幻想世界の怪物たち。どんな異常な能力を使うのだろう。
 いわば、常識の通じない相手、どのような攻撃をしてくるのか? それをいかにしてかわし、攻撃すればいいのか、自分の持つ、どのような技能を使えばいいのか。
 おそらく、これまでとは比べものにならないほどの、奇異な戦いになるのだろう。そう思うだけで、ルーは自分の表情が緩んでくるのを感じる。
 咆哮を上げ、オークが斧を振り下ろしてきた。それを刀で受けた瞬間、その斧が綺麗に裂けた。
「? これ、は?」
 不意に、ある疑問が、頭をかすめた。もしや、と思うが……。
 そう思い、踏み込んで、オークに斬りつける。特異なことはしていない。ただ、普通に間合いに入って、斬り込んだだけだ。事実、オークが斧で防ごうとするだけの余裕があったし、実際に斧でルーの刀を受けた。
 だが、その斧は容易に斬り裂かれ、オークも両断されて、消滅した。
 試しに、近くにいたゴブリンを斬った。剣で刀を受けたゴブリンは、あっさりと斬られ、消え去った。
 溜息をつき、ルーは呟いた。
「所詮は、紙……であったか」
 なんということか。幻想の怪物と戦う、などという、有り得ないシチュエーションに恵まれたと思ったら、所詮は紙人形であったとは。
 ルーはドラゴンの巨体を見上げた。現れた時、木々をなぎ倒したから、てっきり、それなりの「能力」を有していると思ったが。
「おそらく、重量を増やしただけであろう」
 落胆の溜息をついたときだった。
 何かがルーの肩口をかすめ、近くの立木に突き刺さった!
 見ると、それは、一本の槍。
「……そうか。丸めて棒状にすれば、紙にもそれなりの強度が生まれる。それこそ、細く丸めて何らかのエッサンスを乗せておけば、槍として十分使用に耐えうるというわけか」
 ふと見ると、サソリの尾を持った怪物もいる。その怪物は弓矢を手にした半人半馬のケンタウロスをベースにしているが、首の後ろに犬のような動物の頭を持ち、馬の部分の背に翼を生やしていた。
 ルーの記憶に間違いがなければ、これは、バビロニアの神獣、パ・ビル・サグだ。本来のパ・ビル・サグは善良な存在だが、シャットの息がかかっていれば、邪悪な怪物に成り下がっているだろう。
 あの弓矢に、サソリの尾、さらに、翼による機動力。もしかすると、存外、楽しませてくれるかも知れない。
 そう思ったとき、空から衝撃波がたたき込まれてきた。すっかり油断していたから、直撃を受け、アルミュールが消し飛んだ。咄嗟に身をかわし、上空を見ると、数匹のワイバーン。
 どうやら、衝撃波はワイバーンが放ったものらしい。
「……紙ゆえ、火や酸は吐けぬが、空気を振動させることはできる、というわけか」
 念装し、ドラゴンを見る。もしかすると、あのデカブツも、何らかの「力」を有しているかも知れない。そういえば、以前、パピヨンが言っていたが、紙というものは折りたたみ方によっては、意外に頑丈になるらしい。それに、火炎は、目で見ることができるが、衝撃波などは、見ることはできない。
 どうやら、自分の技能を全開にして戦うことになりそうだ。
 そう思ったとき、心の底からワクワクするのを感じて、ルーは言った。
「それでは、お互い、遺恨の残らぬよう、全力を尽くそうではないか!」
 固有の意志を持たぬ紙人形。だが、次々に怪物が雄叫びを上げた。
 まるで、ルーの言葉に応えるかのように。


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