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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第8回 un−8
 影だったり、音を止めたり、魔法円を出したり。ただ者じゃないのはわかるけど。
 川平が、また俺を見下したような笑みを浮かべた。
「パラレルワールドって、わかる? ……そうね、知ってるわよね。あたしは、ここの世界とは、パラレルな関係にある、平行世界から来たの」
「平行世界?」
「そう。それで、あたし、そこで、泥棒稼業をしてるんだけど」
 泥棒か。普通、言うかな、そんなことを、あっさりと?
「ある『トレゾー』を盗む必要に迫られたのね。でも、その『トレゾー』、手に入れる前に、平行世界のどこかに消えてしまったの。ようやく探り当てて、ここへ来たってわけ」
「……で、その『トレゾー』っていうのを盗みに、この街へ来たのか?」
 頷いて、川平が言った。
「その『トレゾー』の所有者って、『あたしの世界での、君』なの。だから、君の傍にいれば、いずれ『トレゾー』が現れるとふんで、この学校に潜入したの。本当は『あたしの世界での、君』に近しい人物になれれば『トレゾー』を手に入れやすいんだけど、そのポジションには、すでに吾妻さんがいたから、その容姿を借りたわ」
「つまり、由梨になりすましてた、ってこと?」
「まあね。で、ここからが本題。もともとあたしは、こっちの住人じゃない。だから、何らかの『縁(えにし)』がないと長時間、いられないの」
「長時間、て、もう一週間も経ってるぜ?」
「あたしの世界と、こっちじゃあ、時間の流れるスピードが違うから。こっちで一年過ごしても、多分、元の世界じゃあ、二、三日ってところじゃないかしら?」
 なんか、浦島太郎みたいな話だな。俺が川平の世界で三日過ごしたら、こっちじゃ、一年経ってるってわけか。
「それでね? 『縁』に、直接、あなたを使わせてもらうことにしたわ」
「え? 直接、て?」
「言ったでしょ、『君の心、盗ませてもらった』って」
「え?」
 さっきのキスが思い浮かんだ。
「あと、君には、あたしの手伝いもしてもらう」
「手伝いって?」
 混乱し始めた俺が、頭の中を整理するより早く、川平が言った。
「仕方ないんだ。君の心を盗んだ関係上、あたしには、君をある程度まで、管理する義務がある。ただ、その立場だと、『トレゾー』に簡単には手が出せない。管理対象の所有物だと、『盗む』ことにならないから。これは、ある種、約束事なの。でも、シャット・ブランとか、コルボー・ルージュとか、いろいろとややこしい連中も、こっちに来てるから、君を管理することになったのは、むしろ好都合。そうなると、問題がある。あたしが、こっちの世界で問題なく暮らすために、いろいろな『エッサンス』を盗んでいるときに、君のことに目が届かないことになるから。それはイヤだから。あたしが見てないときに、『トレゾー』が現れて、他のヤツに横取りされるなんて、冗談じゃないもの!」
「つまり、俺に、泥棒の片棒を担げ、と?」
 川平が頷く。
 俺に犯罪者になれって言ってんのか、この女?


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