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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第79回 dix−8
 ルーが納得したように頷いて、言った。
「うむ、あれはシャットの仕業(しわざ)であったか」
「なんか、心当たりでもあるの?」
「幻想生物のイラストを収めた画集のエッサンスが盗まれていた。さらに、フィギュア原型師の技能も盗まれていた。その原型師は生きていたから、お主(ぬし)か、コルボーが盗んだのだろう、と思っていたのだが」
「……なんで、あんたが、そんなエッサンスとか技能を必要としたの?」
 ちょっと想像がつかない。
「元の世界にいたときに、幻想生物のドラゴンが使うという『ブレス』の技能を盗んだことがあった。実に使い勝手が良かった。だから、それを盗もうと思ったのだが、一足遅かった」
「ドラゴンブレス」といった、本来、人間が有しない技能など、盗んでも使うことはできない。このルーというヴォラールは、どんな身体構造をしているのだろう?
 そんな視線に気づいたか、ルーが笑いながら言った。
「詳しくは『企業秘密』故、言えぬ。だが、ある『コツ』とさまざまなエッサンスを組み合わせれば、火炎を吹く、酸を吹く、といったことができるようになる」
 その言葉で、おおよその察しはついた。
 おそらく「熱エネルギー」や「酸」のエッサンスを口に含み、「ブレス」の技能で、一気に吹き出すのだろう。
 理論的にはわかるが、それを実行しようとは、とてもではないが、パピヨンには思えない。
 このルーは、どこまで修行マニア……いや、修行バカなのだろうか?
「フィギュア原型師は、刀のデザインだ。なかなかによいデザインをする者なので、それを使い、某好みの刀を作ろうと思っていたのだが」
 もう、コメントするのはよそう。
 イラストのエッサンスとフィギュア造型の技能を使って、幻想のモンスターを作ったのはわかる。しかし、この物量は一体どういうわけか? これだけの数を作ろうと思ったら、相当な数の「素材」が必要になるはずだが? いくらエッサンスだとしても、これだけの物量を維持・制御しようとすれば、手持ちの「空間」をかなり消費することになる。
 そんな疑問を口にすると、ルーはあっさりと言った。
「おそらく、何処かの『コピー機』のエッサンスを利用したのであろう。つまり、あれらの本体は『紙』、もしくは、それに準ずるモノ、ということになる」
「なるほどねえ。でも、数が多すぎるなあ。『紙』なら、火とか水だろうけど。こんなところで、そんなものを大量に使ったら、下手すると、大惨事になるし」
 そう言うと、ルーが言った。
「パピヨン、ここは某に任せて、お主は先に行け」
「え? でも、あんたも『トレゾー』が目当てなんじゃ……!」
「忘れたか? 某は、今回の『トレゾー』自体に興味はない。あくまで、お主の剣士としての成長にのみ、興味がある! 故に、『トレゾー』など、どうでもよい。こんなところで潰れるな! 早く行け!」
 そうだった。ルーがやって来たのは、それが目的だった。漠然と意識はしていたが、明確に考えたことまではなかった。こいつの目的は、「トレゾー」そのものではないのだ。
 もしかして、自分に道を譲ろうというのだろうか? パピヨンは、そんな思いを視線に乗せた。
 それを受け、どう思ったか、ルーが苦笑した。
「わかった。白状する。幻想の怪物相手に、剣を振るえる機会など、おそらく二度とない。このような愉(たの)しみ、誰にも譲る気など、ないのだ!」
 その表情にも、言葉の息吹にも、ウソは感じられない。
 修行バカの行き着く先は、こうなのだろうか?
 世の「修行者」みなが、そうでないことを祈りつつ、パピヨンは、怪物たちの間を抜けていった。
 ルーの援護を受けながら。


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