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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第76回 dix−5
 言われた通り、由梨の家まで来た。
 ていうか、俺んちの隣だが。
「やっぱり来たわね、鞠尾くん」
 シャットがいた。
「いや、ここ、俺んちだし」
 と、鞠尾家を指さす俺の言葉に、まるで虚を突かれたような表情になって、シャットが笑った。
「ああ、そうだった、そうだった! うっかりしてたわ!」
 そして、俺を見る。愉快そうに。
「じゃあ、このまま、自分の家に入るかしら、吾妻さんを見捨てて?」
「? 由梨を見捨てる? なんだ、それ?」
 なんだか、よくわからんことを、言いだしたシャットが、由梨の家の玄関ドアのところに立った。
「今、彼女は、苦しんでる。自分の心に苦しめられてるの」
 由梨が心因性の病気らしい、ていうのは聞いたけど。
「それが、どうかしたのか? それとも、お前、何か知ってるのか?」
 相手は年上だろうけど、なんか、敬語使うのが、イヤだ。
 そもそも、こいつ、川平と同類だし。川平は、まあ、なんていうか、憎めないけど、こいつは、どことなく嫌な感じがする。
 シャットは、ニヤリとした笑いを浮かべ、首を横に振る。
「残念だけど、わたしは知らないわ。でも、何かに怯えてるらしいわね。今日の臨時職員会議で話が出てたらしいけど、簡単にしか情報を盗めなかったから、詳しくはわからない。何かに対する恐怖を抱いているらしいわ。そういうのをほぐすのが、恋人の役目でしょ?」
 なんか、こいつの言ってることはムチャクチャなんだが、確かに由梨が、恐怖感とか抱いているんだったら、なんとかしてやりたいと思う。
 でも。
 俺の心の中で、少しずつだけど、川平の存在が大きくなってきてるんだ。
 俺が何も応えないでいると、シャットがいらついたように俺の腕を掴んだ。
「いいから、来なさい! 時間がないの! ルーまでやって来て、もう、なりふり構ってられないんだから!」
「な、なに言ってるんだ、お前!?」
 抵抗しようとしたが、こいつ、意外に力が強い。
「とにかく!」
 と、シャットが明らかに怒気を含んだ声で言った。
「あんたは、さっさと吾妻由梨を抱いて、ヴァージンを奪えばいいのよ!」
「……え?」
 今、何て言った、こいつ?
 俺が、奇妙な言葉に戸惑っていると、シャットが、俺の腕を掴んだまま、一歩、踏み出した。体が揺らぐ感じがして、一瞬、目の前が白くなった。


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アクセス: 2016