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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第66回 neuf−4
 パピヨンの隠れている位置を確認したシャットは、そろそろ、近くで銃撃することを考えた。
 下手に時間を与えると、パピヨンは空間を盗んで、あちこちに移動するだろう。それを避けるためには、ことごとく先回りして、「そこに隠れるしかない」状態にする必要がある。
 変に頭の回るパピヨンのこと、おそらく「シャットが、最初は高所から狙撃してきたのは技能がどの程度使いこなせるか、確認するため。何度か試した今なら、十分使いこなせると判断し、確実に仕留められる近くで銃撃するはず。その瞬間を狙って反撃しよう」。
 このように考えているに違いない。
 確かに、最初はうまく使えなかった。初撃と二撃目は見当違いの方向へ行った。三発目は頭を狙ったつもりだったが、肩をかすめた。パピヨンはヴォラールだ。命の危険が迫ると、無意識に避けることができる。これはアカシックレコードと同調できるからだろう。様々な情報とシンクロできるが故に、命の危険を回避できる。
 しかし、それにも限界がある。だから、立て続けに、あるいは、強力な外力が加われば、……情報と連動するスピードを上回ることができれば、「自然回避力」も太刀打ちできなくなる。
 これは織り込み済みのことだ。シャットは作戦が成功しつつあるのを実感し、口もとが緩むのを感じながら、パピヨンが隠れている建物を見た。
 今日、病気ということにして、学校を休み、街の様子を念入りに確認しておいて、正解だった。
 まさに、地の利を手にしたのだ。
「さて。あの位置なら、確かに高所からの狙撃はできない。でもね? こっちには、まだ笑気ガスのエッサンスがあるの。これを浴びせたら……。一秒でいいのよ、あんたが動けなくなるなら。そして、その動けない一秒こそが、永遠に動けなくなる『時』の始まりなのよ、パピヨン!」
 そう思ったとき、パピヨンが影から現れて、走り出した。もしかしたら、空間を盗んで移動しようと、外へ出たのだろうか?
 少々予定とは違うが、追い込む場所は他にも考えてある。
 シャットは、その移動先を推定し、空間を盗んだ。その先で、こちらに向かってくる念装したパピヨンを認めると、その胸に銃弾を撃ち込む。アルミュールがはじけ飛び、高校の制服姿となったパピヨンがよろけた。愉快な気持ちになり、シャットは言った。
「あらあら。ダメージが相殺しきれなくて、フラフラになってるじゃない。そろそろアルミュールを『格納』したいくつかの『空間』との接続、しんどくなってきたかしら? それとも、キャパの小さなアルミュールしか残ってないとか?」
 パピヨンが方向を変え、別の場所へ向かう。
 その行く先を推定し、空間を盗む。
 チョコマカと動くせいで、今度は、弾丸で捉えることはできなかったが、それでも、念装する隙を与えず、ほかの場所へ誘導できたようだ。
 しばらく、そんなことを繰り返していると、やがて、一つの場所に、パピヨンがたどり着いた。
 袋小路で、しかも隣り合った建物の屋根で、天井部分が覆われたところだ。高所からは、狙えない。
 予定外の場所だから、ここから追い出す必要がある。そこから「見える」場所への空間を盗まれて、シャットがすぐには認識できない場所に逃げ込まれても困るからだ。
 パピヨンが壁を背にして、何処かを見るような仕草をしているのが、わずかに見える足の動きから、わかった。
 まずい、「場所」を探している!
 そう思ったシャットは、ここでとどめを刺そうと、距離を盗み、「その位置」に飛んだ。


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