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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第64回 neuf−2
 だが、パピヨンも引くわけにはいかない。なんとしてでも、やっと見つけた「運命の人」……「あの人」と結ばれて子どもを産み、可能性を分岐させて、「ヴォラール」という呪いから逃れたいのだ。
 念装して、建物の影伝いに、移動する。
 今度は、後頭部に激痛が走り、アルミュールが消滅した。
 もしかしたら、高所から狙っているのかも知れない。
 パピヨンは、建物の影にある、金網のフェンスに空いた穴から、空き地へと移動した。空き地のような見晴らしのいいところへ出るのは不安があるが、ここを通り抜けることができれば、その先に、勝手口の開いた民家がある。家の中に入ることができれば、打つ手はいくらでもある。
 穴をくぐったとき、飛び出したフェンスの突起でスカートがいろいろと裂けてしまったが、気にしている余裕はない。穴をくぐったところで、念装した。アルミュールの能力で距離を盗んで、屋内へと入ろうとしたときだった。
 今度は、額に激痛が走り、念装が解けた。精神の集中を抑えて距離を盗もうと、アルミュールの能力に任せようとしていたから、アルミュールのダメージ相殺能力は、少々、下がっている。そのせいで、さっきよりも大きいダメージが来た。頭蓋内が揺れ、姿勢がまっすぐ保てない。
 前方、二、三百メートルほどのところに、高層ビルがある。どうやら、今度はその位置から狙撃したのだろう。
 かなりの距離がある。
 その隙を利用して、どうにか移動を、と思ったが、足がおぼつかない。よろけて、倒れ込んでしまった。だが、それが功を奏した。本来、パピヨンの頭部があったところを弾丸が通り抜けたのだろう、建物の壁が爆(は)ぜた。
 まるで、炸裂弾のようだが、少し違う。
 以前、「銃の弾丸」の知識を盗んだことがあるので、わかる。
 この弾丸は、ホロウポイントだ。
 ということは、ライフルによる狙撃とは考えにくい。
 だとすると。
「銃口から、あたしの位置までの空間を盗んでるのか」
 たとえるなら、銃口を出た弾丸は、ワープしてパピヨンに届いているのだ。
 そうすると、避ける方法は、ないのではないか?
 ふと、そんな考えが浮かんだが、それを振り払い、パピヨンは姿勢を低くし、這うようにして、再び穴をくぐって、建物の影に入った。同じところから狙撃したのだろう、左のふくらはぎを銃弾がかすめた。
 そこから、さらに、隣の建物の影に入る。念装しようとした瞬間、近くの壁で、弾丸が爆ぜた。咄嗟に見ると、五百メートルほど先だろうか、民家の屋根に、光の拳銃を構えた、白いハイレグのレオタードと、膝上の白いロングブーツ、肘上の白い長手袋を身につけ、白いマスクを被ったシャットの姿が見えた。
 反射的に背をかがめると、頭上で壁が爆ぜる音がした。
 膝のバネをきかせて別の建物の影に入り込み、そこからさらに、違う建物の壁伝いに移動する。
 このような銃を扱い慣れているなど、いったい、どのような職能者がこの街にいる、……いや、来たというのか?
 そんな詮索は後回しだ。
 なんとか、この場を切り抜けないと!


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